舞台
千と千尋の神隠し
はじめにINTRODUCTION
壮大かつ独創的な世界観が日本のみならず世界中で愛され続けてきた『千と千尋の神隠し』。宮﨑駿によるアニメーション映画の最高傑作が、世界で初めて舞台となって帝国劇場に歴史を刻みます。
この度、舞台化にあたり翻案と演出を手掛けるのは、ミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』の世界初演の潤色・演出を担い、そのほか『ナイツ・テイル』や『ダディ・ロング・レッグズ』など演劇史に残る名作を生み出してきた英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクター、ジョン・ケアード。そして、主演の千尋は、その人気と実力で数々の映画やドラマに出演し、今回が待望の初舞台となる橋本環奈と、ドラマや舞台に加え声優や歌手としても活躍の場を広げる上白石萌音がWキャストで演じます。
少女・千尋が引っ越し先に向かう途中、トンネルから八百万の神々の世界へ迷い込むところから始まるこの物語。人間の世界に戻るために様々な出会いを経て、生きる力を呼び醒ましながら奮闘する千尋の姿が見どころです。油屋と化した帝国劇場が、観客を「不思議の町」に誘います。全世界に贈る一大プロジェクトに、どうぞご期待ください。
今回は2021年11月9日に都内で行われた製作発表の様子をお届けいたします。出席者は翻案・演出を担当するジョン・ケアード、共同翻案・演出補佐の今井麻緒子、主人公の千尋をWキャストで演じる橋本環奈と上白石萌音、ハク役の醍醐虎汰朗と三浦宏規、カオナシ役の菅原小春と辻󠄀本知彦、リン/千尋の母役の咲妃みゆと妃海風、釜爺役の田口トモロヲと橋本さとし、湯婆婆/銭婆役の夏木マリと朴璐美、兄役/千尋の父役の大澄賢也という豪華なキャストの他、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーも加わり、作品の舞台化に寄せてそれぞれの熱い想いをたっぷりと語ってくださいました。
製作発表レポートREPORT
この日完成されたビジュアルを初めて見た主演のお二人からひと言。
橋本環奈 萌音ちゃんと違うパターンで撮影すると聞いた時も、撮影の時も、新しい体験でワクワクドキドキしていました。実際に見ると本当にやるんだなと実感がわきました。
上白石萌音 私も、もう後戻りできないところに来たんだ、いよいよ始まるなという高揚の中にいます。
鈴木敏夫プロデューサー(スタジオジブリ) この作品は、僕の小さなガールフレンドをモデルに作った映画なんです。あれから20年経ち感慨深いです。
(出演者の方を見て)舞台、みなさん、頑張ってください!
宮﨑駿監督とは嫌というほど話しました。彼が舞台化に関して最初に言ったのは「いいよ」と簡単な一言だったんです。なぜかというと「俺の手は離れたから」「あんなに多くの人に支持されたのだから俺のものではない、皆さんのものだ」と言っていました。
『耳をすませば』という映画を作った時にヒントにしたのが、イギリスの方が撮ったドキュメンタリーで、日本の中学生を追いかけていた作品でした。「イギリスの人が作るとこんなに面白くなるんだ」と、宮﨑と二人で話したことを覚えています。なので、今回はジョンも間違いなく素晴らしい舞台を作ってくれると思います。宮﨑もジョンと話して、意気投合していましたから。よろしくお願いします!
ジョン・ケアード(翻案・演出) 初めて観た時から、舞台的な、演劇的な作品だと思っていました。これは絶対に舞台になると。鈴木さんと宮﨑さんにお会いした時、絶対に(舞台化を)いいとは言ってくれないだろうなと思っていましたが、何分かお話したら、宮﨑さんが「いいよ」と。でもすぐそのあとに「どうやっていいの?」と。僕はパニックになってしまいました(笑)。
上演の許可をいただいて感謝しております。準備のために宮﨑さんの作品を全部観ました。『未来少年コナン』は素晴らしいです。『となりのトトロ』も『風の谷のナウシカ』も観ました。ストーリーのなかに知的で高貴なものが含まれていると思いました。ものすごく重要なことを、何年も前から、繰り返し、繰り返し、環境のことをおっしゃっている。女性と男性の平等、人間と動物の平等なども伝え続けています。 一番大事なこと、宮﨑さんの天才的なことは、子どもの心理の中に入り込むことです。それはすごく難しいことです。子どものように考えることができるその才能は、とても素晴らしい物語の語り部たちと並ぶと思いますし、歴史に名を残す方だと思います。
もうひとつ大事なのは、久石譲さん。ジブリの映画を見ていると欠かせない存在です。音楽的才能を豊かに持ち合わせています。彼も快く音楽を使っていいとおっしゃってくださいました。 鈴木さんが「いいことやって」、宮﨑さんが「楽しんで」とおっしゃいました。この(壇上にいる)面々を見ると、映画のキャラクター以上にカラフルですよね。「いい」というのはもちろん努力はしますけど、でも「楽しい」ということは絶対に保証できると思います。
今井麻緒子(共同翻案) 私がジブリに出会ったのは大人になってからでしたが、あっという間に引き込まれたことを今でも鮮明に覚えています。イギリスで生まれ育った子どもたち、それをそばで見ていた(夫の)ジョンまでもが魅了されてしまって、我が家の何%かは宮﨑ジブリでできていると言っても過言ではないくらい強い影響を受けています。
ジョンがこれを舞台にしたいという言葉を拾って、東宝の方が尽力してくださって、ジブリの方も快諾してくださって、今こうしてこの日を迎えられていることが信じられません。素敵で完璧なキャストと、素晴らしいスタッフが集まったので、なんとか素晴らしい舞台を作っていきたいと、ジョンと二人三脚で頑張っていこうと思います。よろしくお願いします。
橋本環奈(千尋/Wキャスト) 本当に『千と千尋の神隠し』は語らずとも、日本中の皆様、そして世界中の皆様に愛されている作品だと思います。その中で千尋役を演じさせていただくというのは本当に光栄なことだなと思います。だからこそ、演じるという気持ちではなく、舞台上で生きていけるように、息を吹き込めるように頑張りたいと思っています。
私自身、初舞台になります。右も左も、上も下も本当に何もわからない状態ですが、周りのキャストの皆さんやジョン・ケアードさんの背中をみて、なんでも吸収して、とにかく真っ直ぐぶつかっていけたらなと思っております。今、隣にいてくれる萌音ちゃんとはこの舞台が決まってから初めてお会いしたんですけど、なんでも教えてくれて、支えてもらっているので、ついていきつつ、私自身も皆さんのことを少しでも引っ張っていけるような存在に変わっていけたらなとも思います。
コロナ禍で、舞台も無観客が続いていた中で、有観客で出来ると聞いた時はホっとしましたし嬉しかったです。実際にお客様に見ていただいて、私も千尋として想いを届けられたらいいなと思っています。まだ台本もセットもなくて、どういう風になるか想像できませんが、何事も新鮮に、楽しく向かっていけたらなと思います。よろしくお願いします。
上白石萌音(千尋/Wキャスト) この映画はもちろん私も大好きです。7歳の時に初めて観て、あまりの世界観に子どもながらに恐ろしさと、何か引き込まれるものを感じて、おいおい泣きながら観て、心に刻まれている作品です。その作品を演じることになった巡り合わせを嬉しく、ありがたく感じています。
この作品に出演させていただくことが決まってから、本当にたくさんの方から連絡をもらって「観たい」とか「何の役でもいいから出たい」とか、こんなにたくさん反応をもらったことはなかったので、きっとそれだけ多くの方に注目されている作品だと思います。
プレッシャーを拭うことはきっとできないので、心地よく味方に感じながら、リスペクトと覚悟と責任を持ってしっかり演じさせていただきたいと思います。映画を観れば観るほど、どうやってやるんだろうという「?」がたくさん浮かぶんですが、きっとジョンの頭の中に素敵なアイディアがたくさんあると思うので、それをしっかり体現できるように精一杯、千尋のように勇敢に頑張りたいと思います。よろしくお願いします!
醍醐虎汰朗(ハク/Wキャスト) 日本のみならず、世界から愛される作品に参加できることを誇りに、そして幸せに思います。自宅のお風呂で何を喋ろうか考えていたんですが、この場に立つと全部忘れちゃいました(笑)。精一杯頑張りたいと思います。
僕自身、プレッシャーを感じていますし、緊張しているんですけど、それ以上にこんなに素晴らしい方々に囲まれているので、胸を借りながら、僕にできることを思い切りやっていこうと思います。よろしくお願いします。
三浦宏規(ハク/Wキャスト) 『千と千尋の神隠し』という素晴らしい作品の初舞台化に、ハクという役で携われることを本当に嬉しく、光栄に思っております。まだ何がどうなっていくのか僕自身も分かっていなくて、どう舞台化されるのかワクワクしています。
龍はどう表現するのか、僕が龍になるのか、龍が出てくるのか、分からないですけど、僕自身もすごく楽しみにしていますし、ファンの方がとても多い作品なので、皆様の期待を裏切らないように精一杯演じたいと思います。
菅原小春(カオナシ/Wキャスト) 「小春…カオナシ、キレキレなの?」っていろんな方から言われました。確かに私もそんなに動くのかな?ジョンさんどうなんだろう?と。何も分かっていないですが、カオナシはとても神秘的な存在で、人物なのか動物なのか宇宙なのか世界なのか分からない生き物です。ただ、生きているのは確かだと思うから、その生き物を、人間の最大限の身体表現を使って、毎日一人でも多くの人の輝きになる”ナマモノ“をお届けできればいいなと思っています。
(今日は)きれいなお洋服を着たり、おめかししたり、みんなで大人の七五三しているみたいで楽しいです(笑)。よろしくお願いします。
辻󠄀本知彦(カオナシ/Wキャスト) 僕も寝る前に今日何喋ろうかなと考えたんですけど、全部一応覚えています(笑)。ワークショップを一度だけやったんですけど、そのときに舞台美術、衣裳の構想、井手(茂太)さんの振付を見て、とてもワクワクしました。ジョン・ケアードさんの演出については、イギリスのミュージカルは素晴らしいな、知恵がいっぱい詰まっているなと感じました。その演出を受けていて、自分が子どもの心に戻ったような感じがして、とてもワクワクして、ただただ彼の演出を受けるのが楽しみです。
宮﨑駿さんについては、5歳の時に初めて見た映画が『風の谷のナウシカ』でした。それが僕の人生の一部になっています。この作品を通して、観にきていただく方の人生の一部になれたらいいなと思っています。カオナシを演じる上で、踊りは僕とてもうまいんですよね(笑)、そこにプレッシャーはなくて、でも、上手さで語ると良くないだろうなと思って、そこに哀愁というか、ダンスの上手さではなく、カオナシという存在で悲しみを表現できた時に、何か違う身体表現ができるのかなと思っています。
これは思いつきですが、今日来ていただいた皆様の人生の一部に少しでもしてもらいたいので、今ちょっと踊っていいですか?
(おもむろに両手をひらひらくねくねと自在に動かし始め、菅原のサポートも受けつつ「…ア…アッ…」とうめきつつ、カオナシが千尋にプレゼントをあげようとするワンシーンをアドリブで表現し、拍手喝采)
ジョン・ケアード 今までどうやったらいいかわからなかったけど今、わかったよ。(拍手喝采)
咲妃みゆ(リン・千尋の母/Wキャスト) 幼少期からスタジオジブリの作品の大大大ファンで、全ての作品を拝見してきました。もちろん『未来少年コナン』も拝見しています。この作品のオーディションのお話をいただいた時に、えも言われぬ興奮に襲われまして、どうしてもこの作品に携わらせていただきたい一心でジョンさんとのオーディションに挑ませていただきました。そして今この場に立たせていただいていること、本当に夢のように幸せです。
先ほど、この素敵なポスターを拝見して、興奮を抑えるのに必死なんですが、こんな状態ではいけないので、しっかりと地に足をつけて、現実世界を生きる千尋の母、そして千尋をしっかり後押しできる心強い存在であるリンを演じさせていただけるよう、心を整えて、お稽古、本番に挑みたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
妃海 風(リン・千尋の母/Wキャスト) 私も会場に入ってからここに立つまで感動し続けております。キャストの皆さんは、ジョンさんがおっしゃったようにカラフル。そのカラフルに圧倒されている私。こんなににたくさんの方々に撮影されている私。それこそ前日、宝塚とかけてもう少し賢い文章を考えてきたんですが、感動が優先してしまって、(咲妃と)同じく興奮しており、それをあまり可愛く表現できないぐらい、興奮しております(笑)。
この先、たくさんの興奮が待ち受けているのかと思うと、すごくワクワクします。リン役として、湯婆婆役の夏木マリさんと朴璐美さんのもとで働くという経験。そして、橋本環奈さん、上白石萌音さんの面倒を見るという経験。そんなことは人生でないと思いますので、幸せを感じております。(咲妃の方をみて)…がんばろう! よろしくお願いします。
田口トモロヲ(釜爺/Wキャスト) 非常に歴史のある帝劇に出演する緊張。そして、世界中にファンを持っています『千と千尋の神隠し』という演劇作品に出演する緊張。ここだけでダブル緊張なんですけど、さらにジョン・ケアードさんという素晴らしい演出家のコラボレーションを受けるという、これで3つの緊張、トリプル緊張があるわけですね。この三つ巴の緊張を、なんとか上手く良き緊張に変えて、自分の味方にして、長丁場ですが、最後まで完走できたらと思っています。舞台の初日には、釜爺ということで、6本の腕が生えているかどうか、ぜひご覧いだきたいと思います。
橋本さとし(釜爺/Wキャスト) 日本の映画史に残る、代表する、そして世界中に愛される作品。それをアニメーションではなく、生身の人間が立体化するというハードルの高さがあります。かつ、この作品を観た方一人ひとりが、キャラクターに思い入れがあって、ひとつひとつの場面に名シーンがあって、残像というものが皆様の心に残っている作品だと思います。そこに僕たちが生身の体でチャレンジしていくところもまたハードルが上がっています。そして、SNSなどを見ていると、この作品がどう舞台化されるのか、本当にワクワク楽しみにしている方が多いのだなと、期待値が高まっていることに一人の出演者として肌身に感じて、さらにハードルが高くなっています。
ジョン・ケアードという世界的な演出家はどのような世界観を表現するのか。僕たちという役者、生身の人間を使って表現するのか。彼は演出をつける時に「Let’s PLAY」と言うんですよ。PLAYというのは遊ぶっていう意味もありますよね。僕たち役者を遊ばせる庭を作るのが上手な演出家なので、僕たちはジョン・ケアードを信じ、宮﨑駿さんが作った作品の力を信じ、委ねながらも責任を持って、観に来られたお客様が楽しめるエンターテインメントにしたいという決意です。
本番までにはあと何本か手を生やせるように頑張りたいと思います。僕、憑依型の役者なので、必ず何か生えてくると思います(笑)。そこも期待していてください。
大澄賢也(兄役/千尋の父) 『千と千尋の神隠し』の舞台化、ジョンの演出、素晴らしいキャストの皆様と一緒に舞台を作るというのは、想像するだけで興奮しますし、その中で自分に何ができるんだろうかと考えて、ワクワクしています。
今、萌音ちゃんと一緒に『ナイツ・テイル』というジョンが作った舞台をやらせていただいています。ジョンはいつもジョークを忘れず、どんなことがあっても穏やかで、年齢やキャリア全く関係なく、誰に対しても平等に接し、僕たちを導いてくれます。そんなジョンと一緒にものを作ることがとても光栄で、『千と千尋の神隠し』も楽しみにしています。よろしくお願いします。
夏木マリ(湯婆婆・銭婆/Wキャスト) このメンバーで7月までやってまいります。ジョンとは『レ・ミゼラブル』以来の再会で、今回はジョンがこの世界をどのように作ってくれるか、今の段階では分からないので、とても楽しみにしています。
(映画版の)声をやらせていただいたのは20年前です。20年後に実演が舞台で叶うとは思ってもいなかったので、とても楽しみです。声をやらせていただいた時と舞台とは別物として、私自身はフレッシュに取り組ませていただきたい、新人のつもりで、橋本さんと同じ気持ちでやりたいと思っています。
20年前ニューヨークに行った時に、ちょうど映画がヒットしていたので、友達に「湯婆婆と銭婆の声やっているのよ」と言ったら「so what?」と言われたんです。向こうは向こうで声優さんがいらっしゃるので、私の意味は何もないわけです(笑)。でもこの7月まで乗り切れば、舞台版の初演をやったのよといったら「OK!」と言ってくれると思うので、エネルギーを注いで、みんなと一緒にいいものを作って、ジョンの演出も楽しみなので、頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
朴 璐美(湯婆婆・銭婆/Wキャスト) 朴璐美です。映画が上演された時、いろんな方々に、今度出るんだねとたくさんの方に言われたんです。私もすごいことだと思って事務所に確認したところ、そんなことないと言われたんです。どうやら千尋の声をやられていた柊瑠美さんと勘違いされて、誤解されていたんですね(笑)。
そんなこともあってとても印象深く残っているんですけど、まさか20年経って、千尋役ではないですけども、湯婆婆・銭婆で出演させていただくことに胸がとても躍っております。ジョンのオーディションが「璐美の全てを出して。いろんな矛盾を抱えた存在だけれども、いろんなものを出してみて」と言われた時に、このジョンの目の奥だったら飛び込んでいけると思って、精一杯演じさせていただきました。
なので、ジョンの演出を楽しみにしていますし、今ここにいる共演者の方々、とても燃えていると思いますので、私もその熱さに負けないように、帝劇を油屋に変えたいと思います。よろしくお願いします。
映画『千と千尋の神隠し』の面白さと、今の時点でどんな気持ちを込めて、千尋を演じたいと思っているか、教えてください。
橋本環奈 一言で伝えるのが難しいですね。観たのは小学1年生ぐらいの時でした。人生で初めて観た映画だったのかな。いろいろな感情が、小学1年生の時には感じたことのない感情にぶつかるというか、怖いという気持ちもありましたし、それでも何度も観たくなる、引き付けられる魅力があったんだなって。言葉で表現するのは難しいですね。
トンネルをくぐるとこんな世界があるのかなと思って、家族でドライブをしている時に「ここを通ったら『千と千尋の神隠し』の世界観に入っちゃうんじゃないかな」みたいなことを考えたこともありました。映画を観た後に、リアルな人生の中で、体験してみたいと思うような、ワクワクした空間が広がっているなと、圧倒されたという印象があります。
改めて作品を観てみて、年齢は違うけど、圧倒される気持ちや面白さって廃れないんですよね。どの年代の方もジブリ作品が好きじゃないですか。引きつけられる魅力があるんだなと思います。今、千尋を演じるということは聞いているんですけど、内容とか、まだ何も決まっていないので、私自身どう演じるのかというのはまだ想像できない部分があります。(舞台出演が)初めてということもあって、千尋と気持ちが似ているというか、初めてのことに直面すると思うんですけど、舞台を通して千尋と心を通わせて、成長できたらいいなとは思います。
上白石萌音 一度観たら忘れられない世界観で、夢みたいな世界ですし、すごく壮大でスケールが大きいんですけど、そこにいるキャラクターとか、油屋で働いている人たちは淡々としていて、日常をあっさり生きているみたいなところにギャップを感じて、そこがすごく面白いところなのかなと何回も見るうちに、思ってきました。
千尋もすごく怖がったり不思議に思ったり、それでも勇気を出したりするんですけど、どこかあっさりさっぱりしているところがあって、そこが子どもの潔さみたいなことかなと思っています。あの世界観の一個一個に驚いたり、一つひとつを信じたりしながら、とにかく真っ直ぐに演じることができたらいいなと思います。
映画『千と千尋の神隠し』でお好きな場面を教えてください。SNSでのビデオコメントでもすでにコメントをいただいていますが、可能でしたらそれ以外の場面を教えていただけると嬉しいです。
大澄賢也 カオナシが初めて千尋の前で「アッ…」というところが、僕のツボです。
田口トモロヲ SNSのインタビューを受けたときは「ちなみに他の人は、ハクが千におにぎりを渡すところ」と聞いて。僕はそれを言っちゃいけないんだなと思って、他のシーンをあげましたが、やっぱりおにぎりを渡して、千がそれまでの緊張が解けて号泣してしまうところは、思わずもらい泣いてしまいますね。
三浦宏規 千尋が銭婆のところから帰る時に、扉を開けると、ハクが佇んでいるところから最後クライマックスまで。ハクの背中に乗って、千尋が思い出してという流れの音楽と映像のすべてが好きです。感動しました。
醍醐虎汰朗 お父さんとお母さんが、豚になる前に食べているご飯が美味しそうだなと。
菅原小春 釜爺が切符を千尋に渡す時に「行きは行けても、帰りはなあ」というところが好きです。
辻󠄀本知彦 銭婆に会いにいく時の千尋が坊に「抱っこするよ」と言うと勝手に歩くところと、机の上で勝手にビスケットをとるシーンです。
咲妃みゆ 湯婆婆さんのお部屋に入るところで「おいでーな」と言われて、千尋が魔力で吸い込まれていって、最後すってんころりんするところが好きです。
妃海 風 細かいんですけど、銭婆の家にいく時に、カオナシが入り口で頭を打つんですけど、人間らしさが出ていて好きです。
朴 璐美 私は、一番最初、トンネルの前に来て風が吸い込まれていくという場面。物語が始まるんだなと、ゾワゾワします。
夏木マリ 湯婆婆がカラスになるところかな。
橋本環奈 私もトンネルをくぐっていく時の風の音というか、観ているこっちも始まるなというゾクゾク感が好きですね。
上白石萌音 おにぎりを号泣しながら食べた直後に、泣いていた千尋がけろっと「ハク、ありがとう、私頑張るね」と走るところが千尋の強さだなと思います。
映画版で湯婆婆/銭婆の声を担当された夏木さん。舞台製作のヒントになるような、映画製作時の印象深いエピソードがあれば教えてください。
夏木マリ 最初にアフレコにいった時に、湯婆婆というキャラクターが、ステレオタイプの悪役だと解釈してスタジオに行きました。悪役って楽しいんですね。いろいろ準備をして、頑張ってやっていたんですけど、宮﨑さんが来て「あのね、スタジオジブリには鈴木敏夫という人間がいるんだ。彼は悪い人じゃない。彼は一生懸命仕事をしているんだ。お金勘定しているんだ。時々ある人にとっては悪く見えるかもしれないけど、一生懸命仕事をしている人間なので、この湯婆婆も悪者ととらえず、一生懸命に油屋を守っているおばちゃんとしてやってください」というオーダーをいただきまして、なるほどなと。
私としては一人で声を入れるから、他の方がどういう塩梅なのか分からなかったんですけど、試写を見たらちょうどいい塩梅になっていて。宮﨑さんはエモーショナルなオーダーをしてくださるので、出来上がりを見て感動したのを覚えております。
世界初演。これから世界で上演するという意気込みを教えてください。
池田篤郎(東宝取締役演劇担当) この作品を初めてリリースした時に、ホームページで日本語以外に中国語、韓国語、英語、フランス語のサイトを立ち上げました。やはり世界各地にファンの方がいらっしゃるので、ファンの方にお届けしたいと思って5か国語で立ち上げました。実に多くの海外のプロデューサーからご紹介をいただきまして、ブロードウェイやヨーロッパ諸国、もちろんアジアも含めて、各国のプロデューサーから興味をいただいております。
もちろん作品をご覧になってからということですので、開幕して、プロデューサーをゲストとしてお迎えすることができると思います。必ずや映画が世界を席巻したように、演劇も世界に向けて、いずれかはどこかの国で上演されることを祈っております。私ども海外でのオリジナル公演は経験済みですので、それに向けて新しい作品が加わっていくことを心から祈っております。
ジョン・ケアード 実現すれば素晴らしいと思います。まずは日本でちゃんと上演するということ。宮﨑さんの作品はケルト的なヨーロッパを彷彿とさせる作品が多いですが、この作品は特に日本的な作品です。日本的なものに対する敬意を払いたいと思っています。海外で成功するなら、日本をリスペクトしているから海外の人が喜ぶものにしたい。ちゃんと日本を理解して、日本はこういうものなんだと楽しめるものとして海外に行けたらいいなと思います。
Wキャストで同じ役を演じますが、会ってみてどのような印象でしょうか。
橋本環奈 ずっとお会いしたいと思っていました。妹の(上白石)萌歌さんとは仲がいいので話は聞いていました。歌声も素敵だし、話し方も優しい音色を出される方と言う印象でした。お会いしてみて本当にこのままだなと。世代が一緒なので一緒に走っていけると思うと心強いと思いました。
上白石萌音 私も安心感があります。初めての舞台で、それが帝劇で、主演で、すごいことだと思います。いろんな作品でも真ん中に立って引っ張ってきた方で、本当に頼もしくて、名実ともに若い人たちの先頭を切っていってくれる勇ましさがあるので、私の方が支えられそうな気がしています。さっき緊張していると言っていたことが衝撃的でした。この相方だったら全てをゆだねられる安心感があります。全然違う千尋になると思うので、環奈ちゃんがお稽古する姿を見て、いろんなことをもらいながら千尋になれたらいいなと思います。
最後に一言おねがいします。
橋本環奈 とにかくここまで来たらやるしか無いという気持ちです。この場に立たせていただいて、より現実味が増しました。千尋として、私自身初めてのことですが舞台に立って皆様に生きた千尋を届けられるようにがんばりたいと思います。
上白石萌音 今日が来るまでずっとドキドキしていたんですけど、皆さんの明るい人柄に触れて、稽古が楽しみで仕方なくなりました。ジョンはいつも遊ぶように演出をつける方で、その稽古場がクリエイティブでとても好きなので、ひとつひとつ楽しんで皆様に素敵な舞台を届けられるように頑張りたいと思います。
※2021年11月9日に行われた製作発表のレポートとなります。