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■ミュージカル 『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』制作発表レポート

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ミュージカル
ラ・カージュ・オ・フォール
籠の中の道化たち

INTRODUCTIONはじめに

鹿賀ジョルジュ&市村ザザ ラブフォーエバー!
永遠の夫婦愛で導く、固く結ばれた家族の絆!

『ラ・カージュ・オ・フォール (La Cage aux Folles)』は、1973年のジャン・ポワレ作のフランスの劇として誕生し、ストレートプレイとして仏演劇史上最長のロングランを記録した。その後、1978年に初めてフランス・イタリア合作で映画化され(邦題「Mr.レディMr.マダム」)大反響を起こし、1996年にハリウッドで「バードケージ(The Birdcage)」としてリメイクされました。
ミュージカル版は、アーサー・ローレンツ演出、スコット・サーモン振付によって、1983年8月21日パレス・シアターで開幕。全1,761回の公演を行った。この初演で、トニー賞6部門、ドラマ・デスク賞3部門を受賞するというセンセーショナルを巻き起こした。その3年後の1986年5月7日にロンドン・パレイディアムで開幕。ウエストエンドでも約8カ月間(全301回)のロングランを達成。

日本では1985年、青井陽治演出、リンダ・ヘイバーマン振付で近藤正臣のザザ、岡田真澄のジョルジュのカップルで初演。その8年後の1993年から市村正親の当たり役のひとつとして上演を重ねてきた。そして2008年からはジョルジュ役に市村の劇団四季時代からの盟友・鹿賀丈史を迎え、「ラ・カージュ」史上最高のコンビとして、2008年、2012年、2015年、2018年公演とも、初日から千穐楽まで連日のスタンディングオベーションという大成功を収め、今なおその人気は衰えを見せない。

今回は都内で2022年1月下旬に行われたミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』の制作発表の様子をお届けします。5度目のタッグを組む、鹿賀丈史さんと市村正親さんが作品への愛と想いを語ってくださいました。

STORYストーリー

こんな時代だからこそ、
手に手をとって繋がる人と人との絆。
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南仏サントロペのゲイクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」のオーナーのジョルジュ(鹿賀丈史)と、看板スターの“ザザ”ことアルバン(市村正親)は20年間同棲し、事実上の夫婦として生活してきた。アルバンはこのところふさぎこんでいて、ショーの出番に遅れることもしばしば。愚痴をこぼすアルバンとそのご機嫌をとるジョルジュ―いわばふたりは倦怠期なのだ。ジョルジュには、24年前の過ち(?)から生まれた最愛の息子ジャン・ミッシェル(内海啓貴)がいるが、アルバンが母親代わりとなって手塩にかけて育ててきた。そんなある日、ジャン・ミッシェルが突然結婚を宣言。その結婚相手が、よりにもよってゲイクラブを厳しく取り締まるべきだと主張する政治家ダンドン議員夫妻(今井清隆&森公美子)の娘アンヌ(小南満佑子)で、家族揃って挨拶に来ることになったので、さあ一大事!

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ジャン・ミッシェルはジョルジュに、一晩だけ《普通の家族》に見えるよう取り繕ってくれるよう懇願し、そのうえ、ずっと会っていない実の母親を呼んで欲しいと頼みこむ。それを聞いたアルバンは深く傷つくが、ジョルジュの説得によりジャン・ミッシェルの頼みを受け入れ、叔父として同席するために慣れない“男装”の訓練をするハメに。ところが、実の母親が急きょ来られなくなってしまい事態はさらに複雑に!

アルバンはついに、女装して母親としてダンドン一家と対面することを決意、馴染みのジャクリーヌ(香寿たつき)の店での食事会はひとまず大成功に終わるはずだったのだが…。

制作発表レポート

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まずはひと言お願いします。

鹿賀丈史(以下、鹿賀) 5回目の出演になります。10何年経って自分自身いい歳になりましたものですから、前回までは黒いカツラを被っていたんですけども、カツラを被っている場合じゃないだろうという思いがあり、今回は地毛で出演いたします。今はいろんな芝居を新しく考えて稽古している最中です。こういう状況の中でお客様に訴える力、人との繋がり、人への愛、他人を思いやる気持ち、そういうものがふんだんに散りばめられた素晴らしいミュージカルでございます。少しでも多くのお客様に来ていただければと思います。

市村正親(以下、市村) この作品と出会ったのが確か44、45歳の時でした。かれこれ30何年この役をやっていますけども、約30年前は非常に元気で美しく華やいでおりました。時が経つというのは、役をよりリアルにしてくれるのだなと最近思います。今回また鹿賀くんと夫婦役をやれるということは運命的なものを感じますし、30年前には出せなかったような、よりザザに近いところに行けるんじゃないかと期待で胸が膨らんでいるところです。去りゆく美しさをどこまで自分の手元に置いておくことができるか…、最近はメイクの技術も発展していますので、いろんな方からメイクの技を盗んで、束の間の嘘の輝きを放っていけたらと思っております。大変素敵な作品ですので、このコロナ禍、皆様に愛と喜びと感動を与えられたらいいなと思います。

ジョルジュはアルバンの、アルバンはジョルジュのどこに惹かれていらっしゃいますか?また鹿賀さんは市村さんの、市村さんは鹿賀さんの、どこに俳優としての魅力を感じていらっしゃるか、それぞれ教えてください。

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鹿賀 アルバンはわがままな奥さんですが、可愛いらしく、二人で力を合わせてゲイクラブをやっているということにおいては、かけがえのない人です。喧嘩して、普通の家庭にあるようなことがこの家族の中にもあって、その辺が物語を深めている面白いところかなと思います。チームのような強いものを感じられます。この難しい時代にこの作品をやるということは、よりインパクトがあるのかなと思っています。感染症の問題もありますが、ご覧になるお客様に、人間というものを大事にすること、人を愛するということ、自分は自分で強く生きていくというメッセージを面白楽しく伝えられるといいかな、と思いながら稽古をしています。
市村さんとは49年の付き合いになります。20代の頃は劇団四季で一緒にやっておりますので、市村正親という俳優の魅力は最初から知っています。一番言えるのは芸の幅が非常に広いということ。舞台ならではの芝居の押し出しが非常に強くて、的を外さないすごい役者だなと思っています。長く付き合っているということもありますが、やっぱり息が合うというのはやっていて非常に面白くて、気持ちのいいものです。この二人の関係を中心に舞台は展開していくので、お客様にも楽しんでもらえたらと思っております。

市村 ザザのわがままを全部聞いてくれるところがジョルジュの魅力なのかなと思っています。それとダンディであるということ、品があって、大人で、全部私のわがままを聞いて支えてくれる。そういうところに惚れているんじゃないかなと思います。
俳優・鹿賀丈史については、私が24歳で劇団四季のオーディションを受けた時から、常に舞台のセンターに立っていたのが鹿賀丈史。『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ウエストサイド物語』『ヴェローナの恋人たち』『カッコーの巣をこえて』、常にセンターに立って、とても良い声で、良い手本でありました。僕はいつもその横でコバエのようにブンブンブンブンと、「うるさいな」と言われながらやってきました(笑)。そんな男が鹿賀丈史と夫婦になり、最近ではWキャストで同じ役をやって、随分頑張ってきたなと。それは全て僕にとって憧れの鹿賀丈史がいたから、ここまで来られたのかなと思っています。
ジョルジュとザザの役がダブってくる場面があるので、幕切れの後ろで手を組んで歩く場面などは、僕らの若い頃を知っているお客様なんかは涙々の世界ではないかと思います。

宣伝文句に「鹿賀ジョルジュ&市村ザザ ラブフォーエバー!」とあるのですが、これはどういう意味でしょうか?“フォーエバー”ということはファイナルという風にも受け取れるのですが。

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鹿賀 そういうことではないですね。僕たちは70歳を越えて、これから先も元気で芝居ができる限りまたこうやって一緒にやる作品はあるかもしれないですし、そういう意味でのフォーエバーだと僕は捉えているんですけども。どうですか?

市村 先日二人で占いの番組に出たのですが、その占い師によると僕らは「ずっと舞台に立ったまま舞台の上で果てる」と言われました(笑)。そういう意味でフォーエバーなんじゃないかな(笑)。やってほしいと言われればやれるんじゃないかと。お互い体に気をつけて、ラブだけでなく、体の方もヘルシーでフォーエバーにしたいなと思っている次第でございます。

鹿賀 でもねえ、舞台をやっている人は、舞台の最中に息を引き取ることが最高だとかよく言われますけども、それは事実無理で(笑)。

市村 フォーエバーというのは気持ちの問題ですね。肉体はどんどん滅びていきますので。歳を取るということは恐ろしいものだと『オリバー!』(ミュージカル『オリバー!』/2021年 市村正親・主演)のセリフにもあって、実感を持って言っていましたけども。気持ちはフォーエバー!だけど現実は悲しいと思います。はい、努力しましょう(笑)。

<真島茂樹からのメッセージ>
市村さんとは若いときにバレエの学校が一緒でした。毎日スタジオの鏡や床を掃除し、お金がなくて先生にご馳走になりながら一緒にダンスのレッスンに励んだ時期がありました。市村さんは劇団四季に入り、僕は日劇ダンシングチームに入りました。鹿賀さんは若いときから活躍されていて、出演された舞台はずっと拝見していましたし、市村さんの舞台も何度も観劇させていただいています。このお二人がまさか『ラ・カージュ・オ・フォール』でコンビを組むなんて、最初に聞いたときは本当に驚きました。鹿賀さんはダンディな方で、市村さんは小鳥のように可憐で、本当にお似合いのカップルです。
鹿賀さんは真面目な方で、踊りの稽古になると少年のようになります。僕と手を取り合うシーンがあるんですけど、なぜかその時だけ鹿賀さんは女性っぽくなるんです。僕は女装しているのに男性っぽくなってリードしています。鹿賀さんはそんな可愛らしい方です。
市村さんは昔から何度も食事に行っていますが、その時の話題はいつも舞台のことです。気づけば朝まで語ったこともあります。『ラ・カージュ』で「芸は無限よ!」という僕のセリフがありますが、まさに市村さんそのものだと思います。
僕も稽古場で自分の心と体にムチを打って汗を流しています。初演から37年、あっという間でした。僕が知っている全部を若い出演者のみなさんに伝授して、舞台に立つ全員が花開き幸せな気持ちになれるよう、そしてお客様にもっと幸せな気持ちになっていただけるように情熱を注ぎます。こういう時期だからこそ、ゴージャスで華やかな世界を通して、物語の中にある全ての愛をお客様にお届けしたいと思っております。
真島茂樹

鹿賀 真島さんは稽古場で常に中心にいて、彼の持っている芸歴やテクニック、そして想いが稽古場を支配するような力と存在感がある方です。僕はその姿を見て非常に頼もしいなあと思いますし、あの人こそ舞台の上で死ぬんじゃないかあって思っているくらいです(笑)。

市村 マジー(真島)は若い頃からバレエで一緒でした。いつも酔うと彼は道の真ん中でザンレール(バレエの空中回転)するんですけれど、今やザンレールすると舞台に立てなくなっちゃうんでね(笑)。とにかくムチを振るうハンナですけども、こんなに高いヒールを履くんですよ。マジーが無事大千秋楽を迎えられるよう、影になってサポートしていきたいなと思っています。

<森公美子からのメッセージ>
鹿賀丈史さんは『レ・ミゼラブル』でもご一緒していますが、リハーサルではフランクで面白いんです。しかし本番になるとあまりにも凛々しく、近づけない存在でした。『ラ・カージュ』では最近市村さんより女性っぽくなって、「(ジョルジュとアルバンという役が)逆の日があっても楽しいかも」という思いもあります。『ラ・カージュ』のお二人は本当に最高です。世界一のコンビ、カップルです。市村さんとは『ラ・カージュ』で長いこと共演させていただいていまして、初めていっちゃん(市村)にお会いしたときから全く変わらなくて、年を取っていないんですよ。私と二人のアドリブもあるんですけど、どんどん長くなってきていて、袖に入った途端に全員でいつも爆笑になってしまいます。私の中で、アルバンの市村さんは間違いなく可愛い人の代名詞です。時代と共にアドリブも変わってきていて楽しいです。
毎回これで最後の『ラ・カージュ』と思ってここ5、6年を過ごしてきましたけれども、今回コロナ禍の中、この愛に満ちた、そして「今この時を何よりも素晴らしい」という素晴らしい歌詞と共に、皆様と今を楽しみたいと思っています。ちなみに、私のわがままボディは益々わがままになり、今調整中です。
森公美子

鹿賀 モリクミちゃんはですね、初演からずーっとやってこられて芝居も安定しているし、一番驚くのは体型をずっと維持されている(笑)。モリクミちゃんはゲイに反対している政治家の奥さんという役なんですけれども、彼女の持っている優しさというか、舞台にかける思いが、我々の世界に入ってきたときにその場を包んでくれるような空気があって、彼女が出てくると非常に安心するんです。そういうところもあって非常に感謝しています。

市村 モリクミちゃんの“カジェル*愛”っていうのがものすごくて。彼女の体はカジェルへの愛であんなに大きくなっちゃったのかなという感じがするんです。彼女は2幕からしか出ないんですが、1幕は袖にいて、特にプロローグでは舞台上のカジェルが一瞬パッと振り向くときがあるのですが、そのときのためだけに不思議な格好をしてカジェルたちを喜ばせてくれるんです。本当に縁の下の力持ちです。またモリクミちゃんのとても可愛らしいハイレグが見られると思うので、今回しっかり目に焼き付けておきたいなと思います。
*カジェル:作中のナイトクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」の“可憐な”踊り子たちの総称

49年の付き合いになるお二人ですが、お互いの変わらないところと変わったなと思うところを教えてください。

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鹿賀 変わらないのは、市村正親という人は舞台が大好きで、表現することにものすごく貪欲であるということ。それは変わりませんね。若い頃のいっちゃん(市村)は非常に線が細くてね。社会についていけないような役が多かったんですけれども、ここへ来て何がきっかけだったのかわかりませんけど、非常に太くなったんですよ。それは肉体も表現も。いっちゃんが芝居を続けていくうちに自分で見つけたものだと思うので、その辺の変化というのは非常に尊敬しています。そういう意味では随分変わったなあという印象があります。

市村 変わらないところは、相変わらずステーキというところ。舞台の上にドーンと立っていると、色気があって華があって大柄で、やっぱりステーキだなあと。僕は昔、鹿賀丈史の横にいるとステーキの横のクレソンって言われたんですけども、最近はミニッツステーキくらいにはなれたかなあ(笑)。

お二人はゲイ夫婦の役を演じることになりますが、この作品を長年続ける中、セクシャルマイノリティの方を取り巻く社会の環境の変化を感じることはありますか?

鹿賀 『ラ・カージュ』の原案者であるハーヴェイ・ファイアスタインの自伝を舞台にした『トーチソング・トリロジー』という作品を35年前にやっているんですね。彼が生きてきた様や、ゲイである彼の生き方を理解してくれない母親と、でも本当は愛し合っているという姿、刺激が多くて社会的な作品で非常に面白かったです。当時観に来られたお客様のほとんどが大変喜んでくださいました。でも中には楽屋にいらして「いやらしい」「何これ」と言うような方もいました。僕は演じていて非常に面白かったし、それを受け入れてくださるお客様もいました。それから何年か経って『ラ・カージュ』をやるわけですが、世界と比べて日本というのは非常に理解が遅れているなと思います。でも、この舞台をご覧になって昔のように「いやらしい」と言って帰ってしまうお客様は今はいらっしゃらなくなりました。そういう意味では非常にお客様に感謝しているところでもあります。

市村 30年前に初めて出演したときは地下鉄を利用して稽古場まで通っていたので、電車の中でセリフを確認していたんですね。すると足が閉じるし、肘は内側に入るし、つい小指も上がっちゃうし…で、それを見た人が一瞬引くんです。30年くらい前はそういうムードがある中での上演でした。「ありのままの私」というナンバーを歌うんですけど、それは明らかに自分がゲイであることへの反抗ではなく、自分が愛する人に裏切られていたということに対して「私は私よ」と歌っていたんですね。その瞬間を舞台の上で生きられていることが、僕は俳優としてこの職業について非常に嬉しいことだなと思っています。僕の30年間でいろんなものが変わってきているけれども、変わらないのは愛だなと思います。

最後にひと言ずつお願いします。

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鹿賀 『ラ・カージュ・オ・フォール』というのは問題提起も含んでいるんですけれども、ミュージカルとして非常に楽しく面白く、そしてまた考えていただける素晴らしい作品です。なんとか3月頭には舞台がちゃんとできるように、お客様も少しでも安心して劇場に足を運んでいただけるような状況になることを願うばかりです。自分はこの作品に真摯に取り組んで、どんなことがあろうと役者としての想いを曲げずに稽古を続けていきたいと思います。今日はありがとうございました。

市村 コロナ禍でこの2年くらい舞台が中止になったり再開したりしてきましたが、お客様が満杯に入って舞台で表現されたことに素直に反応できるときが、一番劇場が喜ぶはずなんです。声を出しちゃいけないとかいろいろ規制が多い中、とにかく感染者が出ないように俳優、スタッフ一同気をつけながら大千秋楽まで乗り切れたらいいなと思っています。舞台の上からの愛は、カンパニー一同ものすごい勢いで出し続けていくと思うので、お客様がそれをしっかり受け止めてくださって、マスクの中で笑って感動してくれたらいいなと思っています。そういう作品になるよう一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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