誰もが知っているゴシックロマンの名著「フランケンシュタイン」を、大胆なストーリー解釈と流麗にしてメロディアスな音楽でミュージカル化した本作。2020年に待望の再演決定!約2,000通の応募から抽選で選ばれた150人のファンを迎え、キャスト陣がトークを繰り広げました。
登壇者
【ビクター・フランケンシュタイン/ジャック】中川晃教/柿澤勇人(Wキャスト)
【アンリ・デュプレ/怪物】加藤和樹/小西遼生(Wキャスト)
【エレン/エヴァ】露崎春女
演出:板垣恭一
司会:東宝演劇部・篠崎勇己プロデューサー
<トークセッション>
篠崎プロデューサー:3年前の初演が盛り上がったので、終わってすぐに再演したいと出演者の方にお声がけしたところ、皆さんそろって「3年先はわからないなあ」と言っていたんですが、あっという間に3年もたってそろっていただけました。初演の際、2役演じ、難しい曲を歌うなど色々あったと思いますが、周りの反応やフランケンをやって変化などはありましたか?
中川晃教:初演の時の制作発表の時に、超緊張していて。その時、偉大なる生命創造のなんとか…未だにタイトルを覚えられないけど(笑)。『偉大なる生命創造の歴史が始まる』を歌ったんですよね。あの時の事を考えると、よくやり遂げて、しかも再演というところまでたどり着けたなあと思います。
柿澤勇人:アッキーさん、緊張していたんですか? 緊張していたという割には歌の最後のロングトーンが長くて、長くて。 『ここで切ろう』って言っていたところより伸ばすから僕はどうしようかと…。当時の動画に僕の動揺が残っていますよ!
中川晃教:ごめん、俺の自由なところが出ちゃった(笑)でもあの時は緊張した。緊張しなかった?
柿澤勇人:僕は制作発表の半年くらい前に、舞台上でアキレス腱切っちゃっていて、それ以来の舞台だったから記者会見では脚をひきずっていたんです。まだ痛くて。記者の方々から質問をいただいて『僕の脚はまだフランケン状態です』とつまんないこと言った記憶があります。アッキーさんは大丈夫でしょうけど、僕の場合、ビクターの歌は音域をフルで使わないと歌えない曲だったんで、そんな曲を披露しなければならないのはハードルが高かったです。あの時アンリの2人は歌唱披露してないんだよね。楽しないでくださいね(笑)
小西遼生:いやいや、舞台上では大変でしたよ。僕らは虐待を受けていましたからね(笑)
加藤和樹:鎖が冷たくてねー…(笑)
中川・柿澤:鎖、冷たかったの?!(笑)
小西遼生:素肌にカッキーの汗のシャワーを浴びてね(笑)
加藤和樹:2人とも涙なのか汗なのか鼻水なのか、わからないくらいで(笑)そのくらい感情があふれ出ていましたねー(笑)
篠崎プロデューサー:いろいろ話していただきましたが、板垣さんから見てどうですか?多種多様な4人ですが
板垣恭一:そうなんですよ。皆、個性が違うのでやりづらかったですね(笑)うそうそ(笑)
初演の稽古で、段取りが違っても僕はいいんだけど…って小声でつぶやいたら『いいんですか?』と応えてくださって。あと共演者の濱田めぐみさんにも同じ事を伝えたら『いいよ』と返され、次に照明さんにも伝えたら『こいつら皆、照明の中に入らないやつらだから。立ち位置守れないやつらだからいいんじゃない?』とあたたかいお言葉(?)をいただいたことが印象的でしたね(笑)
4人とも本当に勝手で、個性が強くて(笑)意思のある役者さんが好きなので、本当に楽しかったです。
篠崎プロデューサー:メインキャスト全員が1幕と2幕で2役演じる訳ですが、演じる側としてはどうなんでしょうか。
中川晃教:2役を演じることができる「フランケン」という作品は、俳優にとって1つの役ではなく2つの役で演じる、ということはどの作品とも違う作品だと思います。それに、お客様も2つの顔を見る事ができて、俳優がどうチャレンジしているのかを楽しめる。4通りの組み合わせで楽しめる事がこの作品がより盛り上げていただけた事に結び付いたのかなと思いますね。
柿澤勇人:新しい命を創造して世界を変えていくんだ、というある意味一本筋の通った真面目な役ですけど、一方で2幕では自分が作った怪物を虐げる闘牛…場?
小西遼生:牛にしないでくれる?(笑)
柿澤勇人:闘技場(笑)の話になるので。180度違う役だったので、カロリー的には相当しんどいですが、違う役だからなのか、2つの役をやれることは楽しかったです。
印象的だったのが、大竹しのぶさんが観劇してくれて。『楽しかったよ! でも2幕はカッキーあまり出てこなかったね』って。何を言っているんだろうと軽く流していたら、一緒に観に来ていた後輩の唯月ふうかが『私は2幕のカッキーさんのアレをみてすごく怖かったです』と話し出して、しのぶさんが『え?』って言うから、あの役も僕ですよって教えると『嘘でしょう? この役者さん誰だろうって思ってた』ジャックが僕だとわからなかったらしくて(笑)それは嬉しいというか悲しいというか…、それくらい振り切れていましたね。あと覚えているのが、本番終わりに板垣さんが楽屋に来て『カッキー、あの…、やりすぎというか何というか…クレームが入りまして(笑)あの言葉はやめようか』って言われて(笑)
板垣恭一:クライアントからお叱りをいただいて(笑)あの、正確に言うと僕はいいと思ったので『もう一回、同じ事を言われたらまたくるね』と二人で笑って終わったんです(笑)
篠崎プロデューサー:稽古場で観ていて、ジャックという役の作り方が真逆というかアプローチの仕方が違かったのが印象的でしたね。カッキーは稽古場からいろいろな事を試す。ど外れたこともやってみるのに対して、アッキーはシンプルに作っていって最後の段階でガッといろいろな物を出していくっていう真逆な感じがあって、2人いるといろいろな方法があるんだなと思って。それは怪物のお2人にも感じたことです。怪物はアンリという人格をどこまで引きずるかというところがポイントだと思うんですけど、そこも難しいと思うんですけど、どうなんでしょう。
加藤和樹:完全に違う人間じゃない所が難しいところで、アンリという人格をどこまで怪物の中に埋め込むかのバランスをとるのは難しいところではありました。でも根底にアンリがあるから、ビクターに対する執着する意味みたいなものが怪物の中にあったのかなと。精神的というより肉体的な辛さがあったので、そこから出てくる感情もありましたね。
小西遼生:人間的に繋がっているところがある役なので、計算して作れる部分もありました。怪物役はどう作ればいいのか結構自由度が多いと思うんです。カッコイイ衣裳やヘアメイクでカッコよく作られているんですけど、原作では、人間が命を生み出すことの罪深さや、生まれてきたもののおぞましさを抱えてないとお客さんが観た時に友情物語だけになりそうな可能性もあったので、どう作っていくのか、そこを作るためにもアンリはどのくらい清廉に作っていけばいいのか、心の在り方の匙加減を作りやすい役でしたね。
篠崎プロデューサー:日本版を潤色されたのが板垣さんですが、日本版の前にやった韓国版が初演と再演で微妙に違う中で、日本版をどう作っていったんでしょうか。
板垣恭一:韓国版の初演と再演の両方を翻訳していただいて、いいとこ取りしました。かつ、僕が腑に落ちないところがあったので、そこは書き足してます。書き足したり、引いたりしています。今、加藤くんと小西君の話を聞いて思い出したんですが、アンリの記憶があるかないかというところは台本には特に書かれていないんです。深い話になってしまうけど、人間の意識はどう出来ているのかっていう話で…。怪物は、ポケットの中に日記が入っていたので、それを読んで人格を作り直した可能性もあるんですけど、「私とは何か・何によって出来ているか」っていう話かもしれないと思いましたね。だいたい人格って記憶で出来てると思うんですけど、怪物はそれが一度ぶった切られているんですよね。だから、思い出したような、思い出してないような切なさがあるのかなと。そんなところを足したりしています。
篠崎プロデューサー:作りこんだシーンの所だと思うんですけど、アンケートでも感動したという声が多かったですよね。あと、本番を韓国メディアが観に来て下さっていて。
板垣恭一:そう。韓国メディアの方から取材を受けたんですが、取材の最後に「どこをカットしたんですか」「韓国版より短いですよね」って言ってきたんです。実際は韓国版より長いんです。つまり、短く感じたってことなんですよ。韓国のライターさんが短く感じたってことが、本当に嬉しくて。自慢しちゃいました(笑)
篠崎プロデューサー:アッキーは韓国でフランケンの歌を披露したと聞いているんですが。
中川晃教:はい、『偉大なる生命創造の歴史が始まる』を歌わせていただきました。リハーサルの時にオーケストラの指揮をしていた方が、韓国語なので何を言っているかは分からなかったんですけど「なにこれ?戻って、もう一回」みたいな感じで、「私の横で歌って」って言われたりして、テンポの切り替わりとかが激しい曲なので譜面上に書かれている通りにやっても上手くいかなくて、僕たちが初演の時に感じた難しさをこのミュージカルを作った本国の韓国の方でも難しいと感じていて、そんな作品に僕たちは挑んだんだなって思いましたね。
お客さんのあの拍手はもう…、日本のお客さん負けてる!って思うくらい(笑)イントロが始まっただけで歓声がウワアアア!って雄たけびが聞こえてきて、なんだこれって思いました(笑)韓国のミュージカルの盛り上がり方ってそんな感じなんですかね。
加藤和樹:その時のがフェスってこともあって盛り上がりが凄かったんだと思うんですけど。僕も韓国で何度か観劇していますが、ミュージカルが韓国のエンターテイメントの文化として根付いているので、ちょっとチクショウって思う部分もあって(笑)お客さんへの伝え方をどうしていくかという所と、観る側としてどう観劇するかなど勉強になるところはありますね。
中川晃教:韓国のミュージカルはクオリティが高いなと感じますね。だから、お客さんもそれを望んでいて、エンターテイメントに対する欲望みたいなものがお客さんからも感じられますね。
篠崎プロデューサー:楽曲を作った方にお会いした時に、難しいけど韓国ではどんな反応だったのか聞いてみたら、難しすぎて怒られたって言っていました。それをやっていただいた4人なんですが、アンリからみて2人のビクターとの関係性についてはどうでしたか。
加藤和樹:打合せをした記憶はないですね。本番でも変わっていきましたが、毎日ドキドキ感や緊張感はありました。僕の中での2人のビクターの在り方で、アッキーさんは『共に進んでいく』という意志が強くて、カッキーは『自分が支えてあげなきゃ…』という気持ちがしたんです。ほおっておけないみたいな気持ちがあって、そういう心持ちの違いはありました。
小西遼生:稽古中はどちらのビクターに対しても感傷的になるんですが、カッキーからは『とにかく我のために死んでくれ!』感がありましたね。『俺のために死んでくれてありがとう!』みたいなエネルギーを感じて、その想いの強さを受けて潔く死んでいけました(笑)
カッキーはお芝居を目で表現する強さがあったんですけど、アッキーはめちゃくちゃ歌で表現してきたりとアプローチが違うのに同じ気持ちが届くという不思議な感覚でした。飛ばし方が違うのに同じところに刺さってきて面白かったですね。
怪物になった後の復讐心はカッキーに対する方が強かったです(笑)2幕からのドSな目線が凄くて、いたぶってくる感がハンパなくて、圧が凄いなーって、これは役なのかカッキー本人なのかわからないくらいでした(笑)
篠崎プロデューサー:怪物で言えば、劇中で言った「クマ、美味しい」ですよ(笑)何故か大ヒットしてしまって、毎回笑いが起きてましたよね(笑)それを受けて急遽、物販でクマカレーを作ってね(笑)せっかくなんで食べてみますか?(笑)
中川晃教:本当に出てきた!(笑)
加藤和樹:すごい!(笑)
中川晃教:辛口って書いてる(笑)
篠崎プロデューサー:売切れもして、凄かったんですよ。
柿澤勇人:熊肉なんですか?
小西遼生:え?僕の肉入ってない…(笑)
篠崎プロデューサー:ただのカレーだ(笑)
中川晃教:ちょっと甘め。
柿澤勇人:美味しい。お肉ちょっと固いですね。
篠崎プロデューサー:ジビエみたいな感じですかね。あの「クマ、美味しい」は板垣さんが考えたんですか?
板垣恭一:いや、あれは韓国版のままです。ほぼ直訳で「クマ、美味しい」って(笑)最初にもらった直訳版を見て、そのまま使いました(笑)
(今回からエレン/エヴァ役を務める露崎春女が劇中歌「その日に私が」を歌唱)
露崎春女:緊張しました。ミュージカルが初めてで人前で歌ったのが初めてだったのでドキドキしました。
篠崎プロデューサー:最後に一言みなさんからお願いします。
板垣恭一:またこの4人と、露崎さんはじめ新しいメンバーと、新しいフランケンシュタインをお届けできるよう頑張っていきたいと思います。
露崎春女:初めてのミュージカルが素晴らしい作品で、素晴らしい皆さんとご一緒できることを本当に楽しみにしています。精一杯頑張らせていただきます。
小西遼生:久しぶりにこのメンバーと会えて、当時見に来てくれていたであろう皆さんとお会いすることができて、またやるんだと実感しました。僕ら演者も身を削って、心を削って作る作品なので、覚悟して、前回以上に熱い舞台をお届けできるようにしたいと思います。
加藤和樹:またこの作品を出来る喜びを噛みしめています。本当に肉体的にも精神的にも身を削るような作品なので、1シーン1シーンに命を賭けて、パワーアップした作品をお届け出来るように頑張りたいと思います。
柿澤勇人:初演の時の大千秋楽で、みんながカーテンコールで立って盛り上がってくれたのを覚えています。今回はさらなる熱狂を巻き起こしたいと思います。個人的には1年ぶりのミュージカルで、結構えぐいハイカロリーな舞台なので、ちゃんと準備して、大千秋楽以上の熱狂を東京から始めたいです。
中川晃教:知ってる方もいると思うんですけど、1日か2日だけスペシャルな日があって、僕とカッキーが同じ舞台に立つ日があります。ああいうこともこの作品の魅力だなと思います。
(柿澤勇人:またあるの?あの日、すごい楽だった(笑))
ね、楽だったよね(笑)そんな貴重な経験をカッキーとできたのもこの作品です。この作品を作った韓国人でも難しいといわれた楽曲を僕たちが挑戦できましたで、初演を終わらせることができたのもカッキーがいたからだと思います。
小西君とは同世代で、親友役であり怪物役でもあって、ふり幅をもった感情を彼から感じるもの、同世代で一緒に戦ってきた経緯があるからこそこの関係性の中で作り上げることができたんだと思います。
和樹くんとは別作品で共演中ですけど、この作品でもその胸に飛び込みたい(笑)胸を借りて頑張りたいと思わせてくれるような熱い部分があります。
誰一人欠けても成立し得ない『フランケンシュタイン』という作品を再演でもお届けしたい、新たなキャストを迎えて、たくさんのお客さんに足を運んでいただいて、ミュージカルの魅力、エンターテイメントの魅力、そして僕たちの魅力がしっかりと伝わる再演となるように、チームワークで頑張っていきたいと思います。