新橋演舞場シリーズ第7弾!! 東京喜劇
熱海五郎一座
Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー
~日米爆笑保障条約~
おしゃれでクール、そして大爆笑の東京喜劇!二年越しの笑いをためてお届けします!
イントロダクション
三宅裕司率いる熱海五郎一座による「Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~」が、2021年5/30(日)~6/27(日)の間、東京・新橋演舞場で上演されることが発表されました。本公演は、2020年6月に上演予定だったものの、新型コロナウイルスの影響で中止となった同作の延期公演となります。出演者には中止となった昨年公演と変わらない面々が名を連ね、気持ちも新たに二年越しの笑いを提供すべく、舞台に臨みます。
今回は2021年3月に行われました、本公演の取材会の様子をお届けします。座長の三宅裕司をはじめ、今作のゲストである元宝塚歌劇団星組トップスターで最強のコメディエンヌ・紅ゆずるとAKB48二代目総監督・横山由依が、意気込みを語りました。
ストーリー
太平洋戦争も終盤のサンフランシスコ。魅惑の女性DJ“ニューヨークの桜”と共に対日謀略放送に加担している日系アメリカ人ジャズバンド「ツインズ」のメンバーは、アメリカ敗戦!?の大統領声明を聞く。
同じ頃、空港に降り立った日独同盟軍西米国支部作戦本部長である女性海軍中佐は、アメリカ日本化計画を発令する!
その結果、バンドは、嫌いな演歌や歌謡曲を演奏しなければならなくなる。
強面な割には、キュートさも垣間見られる海軍中佐には、さらに別の顔もあったー。
連合国と日独の戦いに翻弄される日系ミュージシャンの悲劇という名の東京喜劇!
笑いと音楽と感動のストーリーがあなたの脳を揺さぶるー大エンターテインメント。
日米爆笑保障条約!署名、調印してください!
取材会レポート
三宅裕司(以下、三宅)最近わりと舞台を観に行くんですけど、皆さん本当に苦労していますね。1人おきに座って、客席数も半分の数で、マスクをして、しかも本番前に「会話は控えめに」という放送があって、そんなお客様の前で笑いをやるという非常に過酷な状況が続いています。それでも役者さん達は一生懸命やっていて、最後には立ち上がって拍手したくなるような必死さが伝わってきて、早くこの状況から抜け出したいという思いの中で6月公演をやります。感染症対策を十分に行った上でなんとか客席数を満席に出来ないかなと…。家で一人で観るのとは違う、大勢で劇場でひとつの笑いを共有する興奮を味わってほしい、その世界に戻ってほしいと思っています。東京喜劇ですから笑いが起これば起こるほど役者はノリにのっていい舞台ができると思うので、たくさんのお客様にいらしていただいて、しかもその時に満席であれば最高の舞台になるなと思っています。
紅ゆずる(以下、紅)昨年、宝塚歌劇団を退団して間もない頃に熱海五郎一座に参加させていただくことになって、男役の時にやっていた装いとはちょっと違う、女性の装いも少しずつ慣れてきていて、また違う演じ方ができるんじゃないかと思っています。お衣裳をどういうふうに着こなそうかと今からワクワクしています。そして今この時代、笑いがこの世の中には絶対必要だと思うので、満席で演じられたらこれほど嬉しいことはないですし、お客様がどういう反応をしてくださるか楽しみです。笑いがお芝居の輪となり一緒に作っていくのが喜劇の醍醐味だと思っているので、お客様と、コメディの天才的な方々とご一緒できることを楽しみにしています。
横山由依(以下、横山)昨年中止になると決まった時は残念だったんですが、(三宅)座長をはじめ沢山の方々のご尽力で変わらぬメンバーで上演出来ることを嬉しく思っています。このような状況の中でも舞台に立たせてもらえることが私にとって幸せなことだと思っています。SET(スーパー・エキセントリック・シアター)の舞台を何度か拝見させていただいたんですが、劇場であんなに声を出して笑う経験が今までなくて、舞台は静かに観るものだと思っていたので衝撃をうけました。SETの方々や芸人さんや宝塚にいらした紅さんなど、いろんなジャンルの方々から刺激をうけて私も新しい一面を出していけたらなと思います。
東京喜劇の特色と、三宅さんからみた2人(紅ゆずるさん・横山由依さん)の笑いのセンスはどのような感じなのかお教えてください。
三宅 東京喜劇の定義はないんですけど、僕の中ではカッコ良さとカッコ悪さの落差の大きさみたいなものが東京喜劇かなと思っています。ボケるところはボケて無様な格好にもなるんですけど、ダンスや音楽や歌ではレベルの高いものを目指す、その落差で笑いにもっていく。あとアドリブはほとんどありません。何かハプニングがあった時にフォローとしてアドリブを入れることはありますけど、それ以外は稽古場で決めて、ウケなかった時には変えていくという形で作っています。たくさん笑って脳が興奮していると最後には涙を流す率が高くなるそうで、それだけ脳が感動しやすくなるということを聞いたことがあるので、それをいつも目指しています。思い切り笑わせるんだけど、締めるとこは締めて、グッとくるところはグッとくるようにするのが東京喜劇だと思っています。とても難しいんですけどやりがいがありますね。
2人は笑いが好きなんだよね。それがいろんなところに出ていると思うんです。紅さんは紅子(紅ゆずるさんが宝塚時代に演じていた客席案内係の人気キャラクター)を見ればわかるし(笑)。演出家にやらされている笑いと自分が好きでやっている笑いの差って大きいんですよ。横山さんも2人でなんかやっているよね、漫才だっけ?(「THE W 2018」に挑戦した、横山由依さんと小栗有以さんのコンビ「ゆいゆいはん」)あれも絶対好きでやっているよね。そこって非常に大事で、熱海五郎一座の稽古場っていうのは笑いの好きなやつが集まって、その好きなヤツが楽しくてしょうがない雰囲気で稽古場でやったものを、そのまま舞台に上げるからお客様に伝わるんだと思います。笑いの好きな2人ですから、おそらく稽古場で初日から一座の一員になってしまうと思います。あとはその雰囲気の中でケジメと締めるとこだけピシッとやれば笑いが増幅していくと思うので、この一座には最高の2人だと思います。歌やダンスといった東京喜劇の要素を2人は持っていますし、1年延びたから台本にギャグが多くなっちゃったんだけど、今から稽古場が楽しみです。
紅さんと横山さんはなぜ笑いが好きなのか、なかでも熱海五郎一座の笑いの好きなところを教えてください。
紅宝塚で特にコメディ作品が好きだったんですけど、客席に対して「笑わせてやる!」ということに重きを置いている作品は少ないので。やはり美しくカッコよくエレガントなものが宝塚歌劇団は最強だと思いますが、私はその世界観の中でココで笑わせたいと思うことが度々ありました。でもそれは瞬発的発想の笑いだと思うので…。宝塚でもアドリブはあるんですが、上演時間や舞台転換のこともあるので、実は私は事前に舞台進行さんには伝えていました。でも熱海五郎一座の笑いは瞬発的なものではなくて、お芝居の中で練りこんで熟成させて削ぎ落してコレだ!というものを舞台にもっていくことに魅力を感じています。笑いを練り込むことばかりをやってきたわけではないのです。例えば紅子役の時は、ある程度の筋書きを頭では立てているものの、その時の瞬発力のインスピレーションでお客様イジリをしていたので、次同じことをやってと言われても出来ないこともある、そういうアドリブなんですけど、そこが大きく違うんですよね。この世の中が沈んでいる時期に、お客様を笑わせてしかも最後には感動していただくことはとても難しいと思うんですけど、すごく興味があったので、いろんなことを吸収して早く熱海五郎一座の一員になれるように頑張ります。
横山お笑いが好きなのは関西出身だからだと思っていて、家でもいつもお笑い番組を観ていたり、笑うっていうことが身近にあったと思います。AKB48に加入してからコントをやらせていただいたり、三宅さんに観ていただいた漫才をやらせていただいたり、お笑いに関わらせていただいていたんですけど、その時は貰ったものを覚えてやっていて、それは作家さんの力だったと思うんです。ここ1年で喜劇やいろいろな舞台を拝見した中で、座長が話されたように稽古場で作り上げたものを舞台でナマでやって反応を見ることが出来ることや、丁寧に作りこんだ笑いって言うのは難しいと思うんですけど、チャレンジしたことがなかったので、そういったことが楽しみです。長くやられている先輩方が沢山いらっしゃるので、勉強をさせていただきながら楽しみたいと思います。
公演が中止になってからYouTubeで座談会をしていたと思うんですが、反響はありましたか?
三宅紅さんのファンの方から、紅さんがああいう人たちと話して大笑いしているのが面白いって(笑)。よく分かんないんですけど(笑)。AKBのファンの人たちも、由依ちゃんが素でこの年寄りたちと話している状況が面白いっていうのが多かったですね(笑)。あとは、中止になったけど座談会をやってくれてありがとうっていう声もありました。
紅さんはその座談会で、長い準備期間になるから成長した私を見てほしいというようなことを話していましたが、それから1年ほど経って変わったと思う所はありますか?
紅男役を長年やっていたので、最初スカートを履く時に「スカート履くぞ!」みたいなところからスタートしましたね(笑)。すごく勇気を必要としたんですけど、今は女性として女優として、このスカートいいなとか、この髪型いいなって思うような、自分に似合うものを求めたり、女優として舞台に立つのは、最初はぜんぜん想像がつきませんでしたが、こんな風に出来たらいいなっていう想像がついてきました。この1年は宝塚から一般社会に出てみて、女性として何が似合うのか、やりたい格好と似合う格好は全然違うし、男役をやっていた時は体のラインをみせないようにしていたんですけど、体のラインをどう見せるかで印象も変わってきますし…。芸事とは直結していないかもしれないですが、それが舞台に活かせたらいいなと思っています。
三宅活かせると思いますよ。宝塚を退団して最初のステージでしたけど、もう台本を作って1年経っているので、その時に作った台詞が今は本当はちょっと違うかもしれないですよね。そこをネタにしているので、ただ1年延期したことをプラスすればそれもネタになるんですよね。「1年前だったらこう思ったけど今は平気」みたいな(笑)。全部逆手にとってネタにできるのが喜劇ですからね。
座談会に、参加されてどうだったかお聞かせください。
紅当たり前ですが、劇団以外の方々とお芝居をしたことがないんですよ。「テレビで見たあの方だ!」みたいな(笑)。この方たちと一緒にお芝居できるんだっていうワクワクが大きくて、すべてが新鮮でした。宝塚を退団してファンの方の前に出ることが無くなってしまったので、ファンの方は「あの人大丈夫かしら」といった状況だったと思うんですけど、よかった笑ってる、しゃべってるみたいな感じで喜んでくださったと思うんです。自分自身も楽しめましたし、共演者の皆様とも製作発表の時以来お会いしていなかったので、そういう場を設けていただけたことで少し近くなったような気持ちになりました。次お稽古場でお会いできるのが楽しみです。
横山座談会というのが初めてだったんですけど、リーダー(渡辺正行さん)がすごかったですね。あんなに自由でいいんだろうかって・・・(笑)。記者会見の時に共演者の皆さんと初めて顔を合わせたんですが、座談会で皆さんの本当のお姿がみえて、すごく楽しかったので、稽古場では腹筋が割れちゃうくらい笑うんじゃないかと思うほど本当に楽しみです。
お3方ともに劇場(SET・宝塚・AKB)でお客様に近い距離で活動をしてきたからこそ分かる、ナマならではの良さをお聞かせください。
三宅笑いが中心の一座ですからお客様がいないと出来ないですよね。お客様が笑ってくれるから次につながる。そこを計算して作っていますから、それがあるから次にいけるんですよね。それが稽古場で予想していた笑いがこなかったら、そこで舞台袖に引っ込みたくなるでしょうしね。それくらい落ち込むと思います。そうならないように本を作って稽古して、それでもお客様の前に出ると意外なことを忘れていたりするんです。なんでウケないんだろうって思うと、フリの台詞を伝えるのを忘れていたりして、そんな基本的なことを出来ていないことが初日に分かることがあるんですよ。これじゃお客様分からないよってなるんです。だから、お客様が舞台を作るのが喜劇だと思いますね。お客様と一緒に作っていく。それくらいお客様ナシでは成り立たないです。
最近では無観客のオンライン配信もありますが、それはこのジャンルでは成立すると思いますか?
三宅SETでも熱海五郎一座でも無観客配信はやらないです。例えば3分の1でもお客様をいれて、笑い声を増幅して配信するといったことならいいかなと(笑)。
紅今まで当たり前にありふれていたエンターテインメントもこの状況になって舞台を観に行くのも警戒されると思いますし、舞台を作る側も細心の注意を払っていますよね。心から演じたいと思っているから演者も舞台に立ち、お客様も本当に舞台が観たいと思って足を運んでくださる。なので、本当に舞台から伝えたい人と本当に舞台を観たい人がいる貴重な場だと思うんです。その空間でしか生まれないものもいっぱいあると思うんです。自粛明けに歌舞伎を観に行ったのですが、貴重なものの宝庫というか、演じることも当たり前ではない、観に行くことも当たり前ではない、だけど劇場という空間を何とか両方共に成立させようとしている。当たり前こそがなんて貴重なことなのだろうと思ったので、私も観にきて本当に良かったとお客様に思っていただけるものをお届けしないといけないと、改めて思いました。
横山AKBの場合は、トラブルが起きることもありますけど、歌があるので音楽がストップすることは基本的に無いんです。お芝居だと、自分が緊張してどうにかなってしまったら無音の空間になってしまうのかなといった緊張感はあります。そうならない為にも稽古をしっかりして信頼関係を築いていくと思うんですけど、その準備期間で皆さんの反応をナマで観られることが舞台ならではですよね。笑いが起こると思ったけど起こらないこともあるので、そういうところをどんどん変えていって、一緒のことをやるにしても、一回一回絶対に何かが変わるっていうのがすごく楽しくて。舞台を観るのも、お芝居をするのも好きなので、特別な緊張感があって楽しいなと思います。
(紅さんと横山さんへ)今回共演が決まって、お会いする前の印象と会ってからの印象と、さらに1年経って印象が変わったところなどがあればお教えください。
横山本当にカッコいいというイメージでしたけど、実際にお会いすると関西弁で、ユーモアのある方だと思いました。稽古はこれからなので、しっかりとお話できてないんですけど、AKBのメンバーに紅さんの大ファンがいて、共演することが決まった時点で(私ではなく)「紅さんを観に行きます」って言われたので(笑)紅さんを観に来てくれると思います(笑)。
稽古が始まったらもっと仲良くなれたらと思っています。
紅可愛らしい方だと思っていたんですけど、実際会うと私並みにすっごい関西弁だなと(笑)。宝塚の時もそうだったんですけど、入団当初は関西弁じゃない方がいいだろうなと思っていたんです。ですが、関西弁で思いっきりお話した方がダイレクトに気持ちも伝わると思っています。だから、横山さんが関西弁で話しかけてくださるのがすごく可愛いなと思って、なのでお稽古中にどんどん仲良くなれたらと思っています。
紅さんは宝塚のトップ、横山さんはAKBの総監督で、お互いに上に立ってひっぱっていく立場だったと思いますが、何か通じるものなどありますか?
紅それはもう、いっぱい話したいなと思いました。何十人もの人数をまとめるのってパワーが必要だったので、個性豊かな面々を同じ目標に向かって足並みを揃えることへの苦労されたことなどお聞きしてみたいですね。
横山それで言うと座長が、個性的なメンバーをまとめていると思うので、稽古が始まるのが本当に楽しみです。
座長、三宅さんのイメージは?
紅すっごいダンディーでびっくりしました。
三宅まあね(笑)。
紅お会いする前は想像がつかなかったんですけど、お会いするとなんと懐の広い、なんてダンディーな方なんだろうと思って、三宅さんカッコいいって言いふらしているんです。あとはもう大船に乗ったつもりで「乗ってくれたら何とかするよ」みたいな。私もトップの間にこんな素敵なことをスラっと言えたらなぁーと思っています(笑)。とても尊敬しているので、稽古中も横山さんとカッコいいなーって言ってると思います(笑)。
横山ずっと活躍されている方ですけど、全然想像がつかなかったです。実際にお会いすると、優しく話しかけてくださって。今もバンド練習が始まっているんですが、優しくアドバイスしてくださって、いろいろなことが見えていて、記憶力が凄いなと思っています。昔話したこととかを覚えているのが凄いなって。
三宅えー。そうかなー。でも昨日何食べたかは思い出せないんだよ(笑)。
横山近いことが思い出せない(笑)。
三宅さんにとって笑いとは。
三宅笑いは免疫力を高めるとかあるけど、人間にしかできないことですからね。動物は笑わないですから。必要なんでしょうね。今、この自粛期間を過ごしてつくづく感じました。笑うことって普段の生活の中で生きる活力になるし、免疫力を上げて健康の素にもなるでしょうし。人間としての面白さっていうのは一人ひとり違うと思うんですけど、演じる笑いっていうのが今テレビの世界からどんどん無くなっていっている気がするんです。芸人さんの面白さで番組を作っていて、役者が演じることで笑いが作れるんだというのを、劇場でやっていかなきゃいけないなと。1人で笑いを観て笑うのと、ひとつの好きな笑いを求めて1か所に集まって一緒に観て笑った時の興奮や感動の大きさは劇場でしか味わえないんですね。その笑いを絶対に無くしちゃいけないと思って、劇場の笑いを続けたいと思っているんです。だから、たくさんの人に経験してほしいと思っています。若い人には演じる笑いは昔風の笑いの感覚があるのかもしれないけど、そうじゃなくて劇場で思い切り笑う時の興奮を味わってほしいなと思いますね。
先ほど話していたバンドの練習は1月から始めていると聞きましたが・・・。
三宅それ、今年の1月じゃなくて昨年の1月からやっていたんですよ。みんな素人なんでね。ジャズなんですけど、昨年の1月から始めて6月が本番で、半年でジャズは無理だろうって言うつもりだったんですけど、これが1年延びちゃったから、もう言えないんですよ(笑)。大変だよね。
横山私はドラムを叩くんですけど、先日の練習で、以前の映像を見て練習しようと思ったら、その映像がちょうど1年前だったんです。時を経てやるのでパワーアップしてないといけないなっていう気持ちもあって、でも全員でまだ合わせられていないのでどうなるんでしょうね。
三宅だからね、ベースとピアノとドラムがしっかりしてないと。そうしないと紅さんが歌えなくなっちゃうから、そこがガタガタだと(笑)。
横山3人がしっかりしてないとですね(笑)。
紅さんはそんな中で歌われますが。
紅宝塚の時は生オケでやっていましたけど、どんな感覚なんでしょうね。まだ参加したことはないので、どのような演奏になるのか楽しみです。
横山さんは感覚を取り戻せそうですか?
横山今回はジャズなので、昔やっていたポップスの時と叩き方が違うんです。三宅さんから叩き方のアドバイスをいただいて、変えていこうとしている所です。
紅実は英語で歌うの初めてなんです。避けてきたんです、実は。
三宅あ、関西弁になっちゃうから?(笑)
紅そういうわけではないです(笑)。節々に英語というのはあったんですけど、全部英語というのは初めてで。男役として素敵な英語で表現することがわからなかったんです。日本語の方がダイレクトに伝わりやすく、カッコよく歌えるのではないかと思っていたので、日本語で歌っていました。なので、今回は初挑戦なんです。
三宅だからといって日本語には絶対出来ない設定だからね。アメリカの話だから(笑)。だから上手く演奏できなくてもいいようにストーリーは作ってあります(笑)。
でもそこで上手くやるからカッコいいんですよね。
楽器演奏と笑いの共通点などはありますか。
三宅リズムと笑いの間(ま)は共通ですよね。音楽出身の方、例えば堺正章さんとか、僕なんかがいうのは僭越ですけど、間が良くてズッコケとか最高の間ですよね。あの間であのスピード感のあるズッコケはすごいなと思います。
ストーリーの部分でこだわっている部分などはありますか。
三宅この公演は3時間近くあるんですけど、ストーリーで引っ張る部分がないと、いくら爆笑しても3時間は引っ張っていけないんですよ。まず設定で最初びっくりさせておいて、笑いながらどんどんテーマのラストにもっていくというのがいつもの作り方なので。当然まじめなシーンもあります。まじめなシーンがあればそのあと笑わせやすくもなりますし。それに音楽と歌の力ってすごくて、音が出た瞬間に劇場が一つになるんですよね。音楽の興奮や感動がストーリーの感動につながるように作っています。最後のシーンが上手くいくかどうかはそこまでの積み重ねですよね。ラストシーンが気持ちよく出来るかというのが、こだわっているところになりますかね。
今回のプロット(戦後の混乱期の中のジャズシンガー)で面白く作れそうなところは?
三宅先ほど東京喜劇の落差の話をしたと思うんだけど、ジャズってカッコいいでしょ。それまでずっとバカなことをやっていた連中がナマ演奏でジャズをやって、ひとつのサウンドを作り上げたら相当カッコいいですよね。それまで相当バカですからね。バカであればあるほど演奏がカッコよくなるんです。戦後のジャズっていうのは非常に好きなテーマで、生き死にの緊張感が連続する時代ですから。その緊張感の中、誰しも失敗するから、それがギャグになるんです。いつも無理に笑わせるような設定にならないようにしています。そうすると戦後の必死に生きている様子はギャグになりやすいんです。今回の設定なんてひどいよね(笑)。始まりから「えーっ?」ってなるよね(笑)。
今回の公演で新しく挑戦していることなどあれば教えてください。
三宅まずゲストの2人が関西人ってことですかね(笑)。東京喜劇ですから(笑)。でもそれを逆手にとって笑いにしています。あと、主要メンバーがジャズのナマ演奏をするっていうのは初めてですね。さっき話した落差の大きさとしては一番大きいんじゃないでしょうか。最後、本当に必死ですから。演奏してぐずぐずになったらどうしようもなくなっちゃいますよ。何とか歌い終えなきゃいけないんです。まあ、紅さんが一番大変だと思いますけど(笑)。へたくそなバンドで歌うの(笑)。
プロの演奏に比べたらとんでもない演奏なんですけど、でもそれがストーリーに意味を持たせるんです。だからそこでお客様の心が動けばいいなと思います。下手であればあるほど訴えるものがあればと。でもこのメンバーが本当に下手な演奏をしたら大変なことになりますから、必死にやってちょうどいいなっていう(笑)。そのバランスが相当おもしろい結果になるなと思っています。
(横山さんに)笑いのツボが浅いとお聞きしましたが、台本を読んで一人で笑ってしまうことはありましたか。
横山もちろん読んで笑ったんですけど、先日お会いした時にギャグが増えていることを聞いたので、それが楽しみですね。
ツボが浅いのでめちゃくちゃ笑ってしまうんですけど、皆さんが面白すぎるので稽古に慣れていかないと…、舞台では必死にいきたいので(笑)。
三宅由依ちゃんも相当ギャグを背負ってますからね(笑)。ギャグは残酷ですよ。目の前で結果がでちゃうから(笑)。
横山そうですよねー(笑)。
三宅皆の時は笑ってるのに自分の時は静かになるとかね(笑)。まあ、そこは私の責任ですから(笑)。
紅…ダンディー(笑)。
横山ダンディー(笑)。
三宅ダンディー(笑)。なんか3人の間が出来てきましたね(笑)。
(紅さんと横山さんに)今回の役の魅力や、大変なところなどがあればお教えください。
紅推したいところがポスターの感じで、男役をやっていた私が女性を演じるところに何かが生まれると思うんです。今ははっきりと断言はできませんが、自分の経験を強みにしたいと思っています。男役から女優に転身すると、ハンディがあるというお話を聞きますが、私はそれを自分のプラスに変えたいと思っているんです。だから芝居冒頭は「宝塚の男役みたいね」とわかる感じでも良いのではないかなと。昨年は女優っぽく演じなきゃって思っていたんですけど、私を知らない人でも「あの人、宝塚の人じゃない?」って分かるくらいでもいいのかなって。そういうところから展開していきたいなって思っているので、むしろ男役で培ったものを大切にしたいと思っています。
横山初めて挑戦する役ですね。どこまで話していいか分からないんですけど、自分でもどういう風に演じていったらいいんだろうっていうのがあるんです。それは稽古を通して作り上げていきたいなと思っているんですけど…。
三宅そうですね。ヒントでいうと、彼女は他のメンバーよりも倍大変です。
横山そうなんです。それは自分にとっても初めてですし、どうなるんだろうなと思いながら、稽古つけてもらうのがとても楽しみですね。あとはナマ演奏っていうドキドキもありますね。お芝居もあり、ナマ演奏もやるので、ってことは3倍?(笑)緊張するな(笑)。
三宅2時間半ずっとお芝居をやったあとのナマ演奏だからね。
横山そうなんですよ。まだいっぱいいっぱいなんですけど、2時間のお芝居の後にやるんだよって言われていて(笑)。そうだよなーって思いながら(笑)。どうなるか分からないですけど、今日、座長の話を近くで聞けて嬉しかったので、笑いと音楽の話とかそんな風に考えたことがなかったから、そういう想いを自分も持って必死に生きていきたいなと思います。
最後に、お客様に向けて一言お願いします。
三宅東京喜劇というのは非常にわかりやすいし、楽しいお芝居ですし、やってる僕らも楽しくやっていますから、いつも思うけど今回はちょっと特別な感じがしますね。爆笑の連続で最後には感動というのをやっていきたいんですが、それが今どれくらい必要なのか、皆がやっぱりこれが大事なんだと思える、そういう公演にお客様と一緒にしていきたいなと思っています。
紅演者側も客席側もそれぞれの人生がある中で、それぞれの時間を生きているんだけど、その空間だけは同じ時間を共有する。1人で笑うんじゃなくて皆で笑う興奮と、それを受けるこちら側の化学反応。お互いの反応を共有しあう空間は本当に貴重だと思いますので、私自身も楽しめるよう頑張ります。そして、千穐楽には「もう一度出ない?」と言っていただけるくらいに、お客様のお腹が捩れるくらいの笑えるお芝居がしたいと思っています。笑わせてみせますので、是非観にいらしてください!
横山最近は人と会うことが減って、1人でいると思い切り笑うこともないと思うんですけど、熱海五郎一座を観て笑う、皆さんの笑いが一致した時って心がつながる瞬間なのかなって思うんです。その笑いが起きることを私も目指したいと思うし、舞台に立たせていただけることが幸せなことので、幸せを噛みしめながら精一杯自分にできることをぶつけて、1公演1公演を大切にしていきたいと思いますので、観に来ていただいて心をつなげていけたらいいなと思います。