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■《インタビュー》多部 未華子さん

多部未華子004_re_変化の予感

13歳で女優デビュー。映画『HINOKIO』『青空のゆくえ』(ともに2005年公開)の演技で注目され、第48回ブルーリボン賞新人賞を受賞。ドラマ、映画から、舞台へと活躍の場を広げ、さまざまな役柄を演じてきた多部未華子さん。デビューから多くの経験を重ね、女優という仕事に取り組んできた多部さんが考える、演じること、そして、これからのこと。

文・盆子原明美 撮影・尾嶝太

 

 「舞台で演じるときは大きな声を出して、大きなリアクションでお客さまに伝わるようにしよう、舞台だからこうしようと思っていることがたくさんありました。でも、今年、大竹(しのぶ)さんと段田(安則)さんと一緒に舞台をさせていただいた経験のなかで、テレビも舞台も変わらないのかなと思うようになったんです。テレビ、映画、舞台というどのジャンルの作品でも基本の部分は変わらない、役として会話をするということがいちばん大事なんだなと、当たり前なことなのかもしれないですが、大切なことを教えていただきました」

 ひとつの作品をつくり上げるために、稽古から本番まで同じメンバーで濃密な時間を過ごす舞台。キャスト同士の何げない会話のなかにもたくさんの気づきがあった。

 「稽古中や休憩中にも、先輩たちがお話しされている近くでそっと聞いていたり(笑)、ちょっとしたきっかけで大切なことを気づかせていただくことが、日々ありました。舞台では同じキャストの方たちと毎日一緒に密に過ごすことになりますし、自分が演じていない場面や自分が関わらない場面も含めて、すべて通して見ているからこそ、いろいろ学ぶことも多いです」

初めての本格的なミュージカルに挑戦

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 多部さんが女優を志すきっかけとなったのは、小学5年生のときに観たミュージカル『アニー』。13歳でデビューし、いつかはミュージカルをという思いをもちながらも積極的に挑戦するまでには至らなかった。
そして20代最後の年に大きなチャンスが巡ってきた。映画を原作に2011年に英国で初演され、「ローレンス・オリヴィエ賞」で新作ミュージカル賞など3部門を受賞し話題となったミュージカル『TOP HAT』。
その日本人キャスト版が、英国オリジナルクリエイター陣によって初上演されることが決まった、そのオーディションだった。

 「去年の秋にオーディションのお話をいただきました。歌や踊りをずっと習い続けていたわけではないけれど、とにかくやれることはやってみようと。
バレエ、ダンス、歌のレッスンを2カ月ぐらい集中して受けながら準備をしました。体力的にも精神的にも大変でしたが、ミュージカル界で活躍されている方に直接教えていただくのは初めてのことだったので、とても勉強になりました」

 オーディションは、英国オリジナルクリエイターたちがいるロンドンで行われた。

 「日本で経験してきたオーディションとはやり方も雰囲気も違いましたね。まず、部屋に入ると〝昨日はよく眠れた?〞と、ふつうの会話をするんです。日本で受けてきたオーディションは、番号札をつけて並んでというイメージだったので新鮮でした。オーディションを受ける私に対して丁寧に話をしてくれて、きちんと向き合って人柄を見てくれているように感じました。
プロデューサーさん、演出家の方、振り付けの方たちに実際に会ってみたら、また会いたいと思う方ばかりで。彼らに出会えたことはとても新鮮で楽しくて、今までに体験したことのない感覚でした」

 多部さんは自分のことを「よくも悪くも人に何か影響されることはあまりない」と分析する。そんな多部さんにとってこの出会いは、自分の人生で大きな心境の変化が起こるのではないかと予感させるほど印象的なものだった。

二十代最後の年にやりたかったこと

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 平成元年生まれの多部さん。昨年から三十歳になる前にやっておきたいことを考えていたのだそう。

 「結婚や出産ということを考える女性も多いと思いますが、私はやりたいことをやりたいなと思ったんです。それがたまたま舞台だった。
運よく『ニンゲン御破算』『出口なし』『TOPHAT』と、やりたかった作品を3つもできることになって本当にうれしかったです。
あとは自分が努力すればいいだけ。今、目の前にあることをひとつひとつ。なので、本番のことはまだ考えないようにしています(笑)」

 舞台がとても好き、と語る多部さんに、俳優というお仕事のおもしろさはなんですか?と尋ねると
 「おもしろさですか? おもしろくはないですけど……」という意外な答えが。続けて「やっぱり大変ですよ。だって、自分が歩んできた人生もうまく説明できないのに、他人の人生をカメラを通して、またはお客さまの前で表現するというのは難しい。
本当に答えがない、ゴールがない仕事だなと思います」と語る。

 役にのめり込むこともなければ、仕事とプライベートのオンオフの切り替えも特別に意識しない。
唯一のリフレッシュは「友達と遊ぶこと」。それでも、「リフレッシュしたいと思って友達に会うわけではなくて、友達に会っておしゃべりをしていたら、それがリフレッシュになっているだけ」と言う。

 最後に、これまで大切にしてきたこと、そしてこれから大切にしていきたいことを教えてもらった。
「大切にしてきたこと……」とつぶやきながら、しばらく考えた後にきっぱり。

 「これまで大切にしてきたことは、〝言いたいことを言う〞。そして、これから大切にしていきたいことも、〝言いたいことを言う〞。だって、おばちゃんになると、だんだん遠慮がなくなるっていうじゃないですか。私はそれを目指します(笑)」

Hair & Make Akemi Kurata Styling Haruki Okamura 
衣装協力 : somnium、VL BY VEE、KOH’S LICK CURRO/JILLSTUART 青山店(靴)


PROFILE/多部未華子(たべ みかこ)
1989年生まれ。東京都出身。2002年に女優デビュー。ブルーリボン賞新人賞、エランドール賞新人賞、読売演劇大賞優秀女優賞・杉村春子賞など数多くの賞を受賞。近年の主な出演作にドラマ『先に生まれただけの僕』『視覚探偵 日暮旅人』『ツバキ文具店〜鎌倉代書屋物語』、映画『日日是好日』『続・深夜食堂』『あやしい彼女』、舞台『出口なし』『ニンゲン御破算』『オーランドー』『尺には尺を』など。

 

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◆ミュージカル『TOP HAT』[東京]

時代を超えて愛され続けるミュージカル「TOP HAT」!
坂本昌行・多部未華子をはじめ、豪華実力派キャストで上演!

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