2019年2・3月に上演されるミュージカル「イヴ・サンローラン」の制作発表記者会見が、10月30日に東京・フランス大使公邸で行われた。演出の荻田浩一をはじめ、ローラン・ピック駐日フランス大使、フランス大使館文化参事官およびアンスティチュ・フランセ日本代表のピエール・コリオ、音楽を務める斉藤恒芳、衣装を手掛けるデザイナーの朝月真次郎、出演者の東山義久、海宝直人、上原理生、大山真志、川原一馬、安寿ミラが登壇し、この作品にかける思いを語った。
フランス大使館文化参事官およびアンスティチュ・フランセ日本代表のピエール・コリオ
日本ではミュージカルは人気のジャンルだと聞いています。フランスの偉大なデザイナーであるイヴ・サンローランを題材としたミュージカルが日本で上演されることを大変嬉しく思います。また、昨年9月にこの世を去ったサンローランのパートナーであるピエール・ベルジュもこの企画について同意をしていたということで、彼へのオマージュにもなると思っています。
荻田浩一(作・演出)
まだまだ、これから皆さんと作り上げていく予定です。歴史的に偉大な功績を残したデザイナーであり、波乱万丈な人生を送った方なので、そのエッセンスをより多く浮かび上がらせた作品にしていきたいと思います。
斉藤恒芳(音楽)
既に半分くらいできたんですけど、こんなに早く筆が進むのは初めてです。新しいミュージカルになるので、1曲1曲を歌謡曲的な雰囲気にして今風な感じと、サンローランの生きた60年代の音楽と混ぜて、楽しめるようにしたいと思っています。
朝月真次郎(衣裳)
これから荻田さんと斉藤さんといろいろなプランを考えながら、サンローランに恥じない衣裳デザインを、私が死ぬまでの最高の作品になるくらいの気持ちで作らせていただきます。
東山義久(イヴ・サンローラン役・Wキャスト)
このお話を初めていただいたときは、僕がサンローランの役と聞いて「え、誰が?」と思わず聞き直してしまったくらいでした。まだまだ未熟な部分はたくさんありますが、ダブルキャストの海宝くん、安寿さんはじめとする素晴らしいキャストの方が集まってくださり、また荻田さんも斉藤さんも朝月さんもずっと前から色々なオリジナル作品を作ってきた仲間なので、皆さんと一緒に作っていけたらと思っています。
海宝直人(イヴ・サンローラン役・Wキャスト)
この話をいただいたとき、まずイヴ・サンローランという題材、そしてそれをミュージカルでお届けするということで、イヴ・サンローランが歌うということ、その世界観がすぐには想像できませんでした。東山さんとはご一緒したことはありますが全然違ったキャラクターで二人とも持ち味が違いますから、ダブルキャストということでたくさん刺激をいただけることを楽しみにしています。既に数曲聞かせてもらっていますが、フランスの、イヴ・サンローランの世界観を余すところなくお伝えできる作品になる予感がしていてとてもワクワクしています。イヴ・サンローランの似合う男になれるようがんばります。
上原理生
イヴ・サンローランという名前は有名で知っていたけれど、ピエール・ベルジュと二人三脚でやっていたことは今回初めて知りました。フランスが世界に誇るファッションデザイナーの話をやることがとても面白いと思いましたし、フランス本国からも様々な後援をいただいてこの作品が動いていくので、フランスに失礼のないように、実在の方々を演じるので敬意を持って誠実に向き合って作っていきたいと思います。
大山真志
新しく作るこのミュージカルの中で2つの役をやらせていただけるのは大変だとは思いますが、とても光栄なことです。いろいろな人生を一つの作品の中で生きられることを幸せに思います。ベルジュはサンローランのことをずっと支えてきたと思うので、僕もこの作品の支えになれるように舞台に立ちたいと思います。
川原一馬
クリスチャン・ディオールという歴史的に素晴らしい人物を演じるということは、身が引き締まる思いです。この作品を通してディオール役と向き合っていきたいと思います。
安寿ミラ
ここ30年近くフランスをよく訪れていて、フランス好きとして、シャネルの役をやらせていただけることはとても嬉しいことです。日本のミュージカルの演出家の中でも最もスリリングな演出をする荻田さんの作品にまた出演できることをとても楽しみにしています。
イヴ・サンローランという実在したカリスマ的人物を演じるうえで心がけているところは?
東山義久
最初にしたことは、この役のために髪をバッサリ切ったことです。あと、荻田さんから「独特の“オラオラ感”な存在感を消してくれ」と言われたので(笑)、繊細に作っていけたらと思っています。
海宝直人
パリに行く機会があったので、イヴ・サンローランの美術館を見てきました。いろいろ拝見して、彼のセンスや空気感はそう簡単には表現できないと思うんですが、感じ取ることが出来たものを少しでも自分なりに膨らませながら役のイメージを作っていけたらと思っています。
イヴ・サンローランという人物に対する印象は?
上原理生
子どもの頃からブランドロゴの高級なイメージがとても強くて、自分は関わる機会はないだろうと思っていました。自分のやっているフィールドで、このような形で関わらせてもらえることになり不思議な感覚ですが、これを機に世界に誇るイヴ・サンローランの美的センスを堪能したいと思います。
大山真志
イヴ・サンローランに関わる映画やドキュメンタリーを拝見しましたが、栄光を手にしたけれども繊細で孤独な人だったんだろうなというのが第一印象でした。それを支えていたベルジュはじめ周囲の人々との関係性がどう描かれるのか楽しみです。
川原一馬
僕も関係する作品を拝見したんですが、イヴ・サンローランは『生きること=デザインすること』それくらい一途に命を燃やしていたんだなと感じました。僕たちの世代にはとてもハイブランドなイメージですが、この作品を通して「イヴ・サンローラン」というブランドと人物をもっと知っていけたらと思いました。
今回ダブルキャストということでどのように自分の個性を発揮しようと思っていますか?
海宝直人
まだ台本が手元にないので何とも言えない部分もありますが、楽曲を聞いていて世界観が非常によく出ているメロディーとアレンジだと思ったので、それにのせてイヴ・サンローランの内面の世界を表現していけたらと思っています。
東山義久
この機会がなければイヴ・サンローランのきれいな面しか知らなかったと思うんですが、「モードの神」と言われたサンローランにどういう光と闇があったのかというところを、僕なりに、また海宝くんなりに、2人の作るサンローランを演じることができればと思っています。
デザイナーの目から、イヴ・サンローランのデザイナーとしての最大の功績と、現代のトレンドにどのような影響を与えたのかを教えてください
朝月真次郎
大学を卒業してアパレルメーカーに入りましたが、サンローランの影響は受けてきました。サンローランは既製服を初めて世に出したデザイナーなんです。当時はオートクチュールで自分の好きなお客様に高く売るのが主流だったのに、トレンチコートやサファリルックといったものを既製服として発売した勇気を、サンローランは既製服の神様ということを、これからの日本のデザイナーにもお手本として見せられたらと思っています。
今回、シャネルやサンローランの母など様々な役を演じられるのにあたって、どんなところを意識して演じていく考えですか?
安寿ミラ
実在しているシャネルさんの資料がたくさんありますので、さらに見聞を広げて演じたいと思います。サンローランのお母様のことは世間的にもほとんど知られていないので、ここは台本を読んでイメージを膨らませて、荻田さんと相談しながら作っていきたいと思います。
どのようなサンローランを描きたいと思っていますか?
荻田浩一
サンローランは服飾の歴史を変えた人で、彼の人生は第二次世界大戦後のヨーロッパの歴史と大きく関わり、歴史そのものを作った人でもあります。当時の政治文化の背景も交えながら作品の構成を固めていきたいと思います。また、彼はネガティブな部分も隠さずオープンにされていた人で、あまりにも繊細過ぎる心と溢れすぎる才能によって心身をすり減らして作品を生み出していたと思います。そんな彼の孤独と苦闘が一番大きなモチーフになると思います。
(最後に大使からの挨拶)
ローラン・ピック駐日フランス大使
サンローランは栄華そのものを象徴しており、美を追求した人だったと思います。自分のブランドを立ち上げ、その時代ごとに流行の先端を作り上げてきたと言えると思います。また、ピエール・ベルジュは『イヴ・サンローランという人間は二十世紀の女性の歩みに伴走をし続けた人、常に女性の解放ということに関心を持ち先頭に立っていた人』と言っています。二十世紀に向けて変わっていった女性の立場をファッションの立場から応援していたのかもしれません。サンローランは亡き後も非常に多くの人々にインスピレーションを与えています。このミュージカルを通じてより多くの人々にイヴ・サンローランの生涯を知ってもらいたいと思います。