ミュージカル
『ファントム』
INTRODUCTIONはじめに
哀しくも美しい… 人間ファントムの物語。
フランスの小説家ガストン・ルルーのベストセラー小説『オペラ座の怪人』を原作に、脚本家アーサー・コピットと作曲家モーリー・イェストンの黄金コンビにより誕生した、ミュージカル『ファントム』。怪人ファントムの人間的側面に光を当てたストーリー、そして独創的な音楽は初演以来高く評価され、世界中の観客を魅了し続けています。
2004年の日本初演以来、国内でも高い人気を集め、繰り返し再演されている本作。2019年には、城田 優がファントム役とともに演出を担当。作曲家モーリー・イェストンも期待する中、公演は大成功を収め、『ファントム』史上初の快挙を成し遂げました。
そしてこの度、2019年に続き、城田 優演出・主演による再演が決定いたしました。演出と主演を通じ、多彩な才能を発揮する城田 優の尽きることのない、さらなる進化にご期待ください。
主演のファントム役を務めるもう一人は、数多くの作品で主演しミュージカル界を牽引。2019年の公演でも圧巻の演技で観客を魅了し、話題をさらった加藤和樹。
怪人ファントムと純真無垢な青年エリックという二面性ある繊細な役に、今回も実力者の二人がダブルキャストで臨みます。
ヒロインのクリスティーヌには、宝塚歌劇団雪組トップ娘役として活躍し、2021年4月に退団。2018年から2019年に宝塚歌劇団雪組で上演された『ファントム』でもクリスティーヌ役を演じ、称賛を浴びたことも記憶に新しい真彩希帆。今回、思いも新たに同役に挑みます。
そしてダブルキャストでクリスティーヌ役を演じるのは若手女優のsara。演劇の名門文学座で芝居を磨き、持ち前の歌唱力とダンスでミュージカル界も注目。今年2月にブロードウェイ・ミュージカル『ドリームガールズ』に出演するなど、今後の活躍からも目が離せません。
クリスティーヌに想いを寄せ、ファントムと恋敵になる貴公子シャンドン伯爵役には、キラキラと輝く存在感を放ち、ミュージカル界で実力を発揮している大野拓朗。1幕での華やかな登場から、2幕でのファントムとの対決シーンまで、最後まで目が離せない役どころを演じます。
そしてシャンドン伯爵役のダブルキャストとして、演出と主演ファントム役を務める城田優が、同役で二刀流から三刀流という驚きの挑戦!ファントム役の加藤和樹とは10年ぶりの共演になります。
オペラ座のプリマドンナで、クリスティーヌへの嫉妬心から彼女を苛めるカルロッタ役には、様々な話題作に出演し、ミュージカル女優として頭角を現している石田ニコル、数々の作品で高い評価を受け、才能を発揮する皆本麻帆がダブルキャストで登場。美しさと可憐さを兼ね備える二人がどのような悪女に扮するのか、期待が高まります。
オペラ座の新支配人として権力を振るう一方で、妻カルロッタの尻に敷かれるコミカルな一面を見せるアラン・ショレ役には表現力の豊かさに定評のある加治将樹、クリスティーヌに優しく手を差し伸べる、オペラ座の舞台監督ジャン・クロード役には中村 翼、傲慢知己な文化大臣役に加藤 将、ファントムの謎を追うルドゥ警部役に西郷 豊が出演。
そして、オペラ座の支配人でファントムの謎を知る、物語の鍵を握る人物キャリエール役を、前回公演でも圧巻の演技で観客を感動の渦に巻き込んだ、岡田浩暉が再び務めます。
個性あふれるキャスト陣が顔を揃え、新たに蘇るミュージカル『ファントム』にぜひご注目ください!
STORYあらすじ
19世紀後半のパリ。
オペラ座の地下深く、醜い顔を仮面で隠し、闇の中で生きている青年エリック。
彼は、その姿を目撃した劇場の人々から怪人「ファントム」と呼ばれ、恐れられていた。
歌手を夢見る楽譜売りのクリスティーヌは、オペラ座のパトロンの一人であるシャンドン伯爵に歌を認められ、オペラ座で歌のレッスンが受けられるよう、支配人のキャリエールを紹介してもらう幸運に恵まれる。
だが、クリスティーヌがオペラ座を訪れると、キャリエールはすでに解任。新支配人のショレが、妻のカルロッタをプリマドンナに迎え入れ、権勢を振るおうとしていた。
そんなショレにキャリエールは、ファントムがいる地下には近づかないよう忠告するが、ショレは一顧だにしない。そして、訪ねてきたクリスティーヌの若さとかわいらしさに嫉妬したカルロッタは、彼女を自分の衣裳係にしてしまう。
そして偶然、クリスティーヌの清らかな歌声を聴いたファントムは、ただ一人彼に深い愛情を寄せた亡き母を思い起こし、秘かに彼女に歌のレッスンをするように。ファントムの勧めに従い、コンテストで歌声を披露したクリスティーヌは実力を認められ、『妖精の女王』のタイターニア役に抜擢される。
シャンドン伯爵はクリスティーヌを祝福し、彼女への思いを告白する。そんな二人を絶望的な思いで見送るファントム。
ところが『妖精の女王』の公演初日、クリスティーヌはカルロッタの陰謀で声が出なくなってしまう。ファントムは失意のクリスティーヌを、自分の住処であるオペラ座の地下へ連れていく。
しかし、それがやがて彼を悲劇の結末へと向かわせることになる――。
REPORT制作発表レポート
まずひと言ずつお願いいたします。
城田優(以下、城田) 個人的には3度目のファントム役の挑戦、そして前回からやらせていただいていますが演出、そこに加えてシャンドン伯爵役をやらせていただくことになりました。この挑戦によって、エンターテインメントに携わっている方たちはもちろん、お客様として来てくださるみなさまにも「城田がこれだけのことをやるんだったら、私も・僕もできるかもしれない」と、何か希望を持っていただけるよう どれも片手間にせず、演出もファントムもシャンドンも誰よりも……ここに2人(加藤・大野)いますけれども(笑)、誰よりも輝きをといつも自分で鼓舞しています。ここに今日いないメンバー含めて、本当に最高のキャストと素晴らしい愛のあるスタッフのみなさまに囲まれながら、なるべくご迷惑をおかけしないように一生懸命、稽古場でも本番も頑張っていきたいと思っております。本当に愛に満ちた素晴らしい作品ですので、よろしくお願いいたします。
加藤和樹(以下、加藤) 再演ということで、気持ちも新たにすごくワクワクしております。新しいクリスティーヌのお二人を迎え、そしてシャンドン伯爵、ほとんどのキャストが一新する中で、城田優の演出の元、また新たなものを見つけていきたいと思います。同じことをやるのではなく、新たなファントムに生まれ変わるのを目指していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
真彩希帆(以下、真彩) 『ファントム』という作品は、宝塚の雪組でトップ娘役を務めておりましたときに一度出演させていただいたことがあります。今回は退団した後ですし、自分の気持ちも数年経って変化しています。何より新しいことにチャレンジする気持ちに心が向かっているので、どんな風に城田さんが演出をしてくださって、それに向かっていろいろなお話ができるかということもすごく楽しみにしています。みなさまに楽しんでいただけるようにこれから稽古してまいりますので、どうぞ楽しみに劇場にいらしてください。
sara 本当に夢のようで。今日ここに立たせていただいたときに、始まるんだなというワクワクとドキドキで今は胸がいっぱいです。しっかりとクリスティーヌという役を全うできるよう頑張ります!
大野拓朗(以下、大野) 今回は演出家の城田優さんから直接ご連絡をいただきまして。「シャンドンが輝けば輝く程、ファントムの闇が深くなる。だからぜひ拓朗にやってもらいたい」とお声がけいただいたので、参加させていただくことを決めました。そのご期待に応えるべく、先週ブロードウェイで『オペラ座の怪人』を観て改めて勉強してまいりました。こんな風に一つひとつの作品としっかり向き合う時間を持って、大切に結果を出していけるようにと深く思いながら近年は芝居に取り組んでおります。観に来てくださったみなさまに元気と勇気をお裾分けできるよう、精一杯シャンドンを演じたいと思います。
城田さんは最初は主演、そして2回目は主演と演出、今回はそれにシャンドン伯爵まで加わるという。なぜそこまでされるんでしょうか?
城田 なんででしょうかねえ。僕もわからないです(笑)。僕自身このエンターテインメントの仕事をする上で決めていることがありまして、それが挑戦ということです。基本的に何をやるにしても、とにかく絶対できないだろうということをいかに自分が努力してできるようになるか。当たり前のことのようですけれど、実はすごく難しいことで。二刀流と言われていたときも、本当にヒーヒー言いながら、加藤和樹に助けてもらいながらずっとやってきたんです。(前回と)同じことをやっても自分の中での挑戦としてはそこまで大きなものにはならないと話し合っていく中、最終的に落ち着いたところが「じゃあ城田、シャンドン伯爵も挑戦してみないか」となりました。僕が三刀流に挑戦することで、それが成功した暁にはきっと観てくださった方や関わってくださった方たち全てに素敵な刺激やポジティブなエネルギーを届けられるのではないかという僕なりの結論に至ったので、シャンドン役も挑戦させていただくことになりました。おそらく本当にみなさんには迷惑をかけ続ける日々が続くと思うんですけれど、そこを超えていくシャンドン伯爵を作れるように精一杯、自分なりに一生懸命努力したいと思います。
城田さんはこう仰っていますが、みなさんからはどう見えていますか? 一番近くにいた加藤さんはどうでしょう?
加藤 彼(城田)はね、なるべくご迷惑をかけないようにと言っていますが、全然かけてください(笑)。やはりそこを支えていくのも我々カンパニーメンバーの役目だと思っているので。彼がどれだけ努力して今のこの立場にいるのかということも、我々はわかっているつもりですし、彼が実現したい夢、形があるのであれば、そこに我々も全力で応えていきたいなと思っております。
クリスティーヌのお二人はいかがですか?
真彩 すごく楽しい試みだなと思っています! できるのかできないのかというギリギリのラインにチャレンジするのは楽しいことですよね。多分、私は私でクリスティーヌという役を作るのに必死だと思うんです。だからこそ演出家であったり、エリック(ファントム)であったり、シャンドンであったり、いろんな視点で見ることができる城田さんの近くにいられるというのは刺激だなと感じています。
sara 人間なのだろうかというくらい、すごいなと思っています。城田さんが挑戦されることで、私もすごく力もらえます。城田さんがここまで自分の限界を超えて挑戦しようとされているということは、自分もそのエネルギーを受けてそれについていって、カンパニー全員で一丸となって前へ前へと進むエネルギーが生まれていくんだろうなと思っています。
(歌唱披露)
大野さんはシングルキャストかと思いきや、まさかの城田さんとダブルキャストということで。何か違いを見せていくとしたらどんな風に見せていきたいと思いますか?
大野 僕はやっぱりシャンドン一筋なので負けるわけにはいかないな、という思いです(笑)。でも一人のミュージカル・演劇ファンとして、(城田)優くんが挑戦しようとしている新しい試みを僕自身も側で見られることにすごくワクワクしています。ぜひとも大谷翔平選手超えの三刀流を完遂していただけるようサポートして、一緒に作り上げていけたらいいなと思っています。
saraさんは『ドリームガールズ』では元宝塚雪組トップスターの望海風斗さんと共演、そして今回は元宝塚雪組トップ娘役の真彩希帆さんとダブルキャストということで、雪組のトップを網羅されていますね。
sara 実は、兵庫出身で、初めて観た宝塚が雪組の公演なんです。 望海さんと真彩さんの“だいきほコンビ”の公演をずっと観てきまして、退団公演ももちろん観させていただいて。大好きで、録画して繰り返し観て、ココが好きとかもあって……。
真彩 やったあ! 仲良くなりたいです(笑)。
(歌唱披露)
城田さんはこの多彩な顔ぶれをどのように演出していきたいですか?
城田 今回のプロダクションとしての構想はありますし、もう打ち合わせは始めています。そういった意味では、具体的なことも変更することもそのまま行きたいと思っていることも多々あります。けれど、お芝居という点においては、みなさんと実際立ってみないとわからないです。僕が最初から決めるわけではなく、前回もそうでしたが、しっかり一人ひとりとディスカッションをして、どういうクリスティーヌを、エリックを目指していきたいのか、そこをまず共有してからですね。僕がこうしたいというよりは、みなさんがどうしたいかを僕がディレクションするという形を取らせていただければと思っております。そしてもちろん、道に迷ったという人たちに対しては僕なりにできる限りのサポートはしたいと思います。基本的には一緒に作っていけたらすごく幸せだなと思っています。
城田さんからお客様へメッセージをお願いします。
城田 この作品が持つ愛の深さや悲しみの深さ、表裏一体とも言える憎しみと愛というものがエリック(ファントム)という役を通して、ネガティブなエネルギーも含めて大きなエネルギーになり、きっと客席に伝わってると思います。これを体験してくださったお客様は、この作品の持つメッセージやエネルギーを感じていただけたと思うんです。
大沢たかおさんの代からずっと続いてきた『ファントム』という作品を、次が集大成としてしっかりと自分の中でもベストの演出、ベストのお芝居、ベストのプロダクションになるようにとにかく精一杯努力をしたいと思います。初めて観てくださるお客様には、この作品を通してミュージカルというものの素晴らしさ、音楽を通して感情を表現することの素晴らしさも、ぜひこの素晴らしいモーリー・イェストンの音楽に乗せてお届けできたらいいなと思っております。
とにかく2023年で一番熱い劇場にしたいと思っております。「どんなもんなんだ?」と観に来ていただければ、その「どんなもんなんだ?」の「?」を「!」に変えて、素敵な感情を持ち帰っていただけるような演出とお芝居をここにいるみんなと作っていきます。ぜひぜひ、足をお運びいただければと思います。
最後に質疑応答が設けられ、サプライズでTBSのテレビ番組「アカデミーナイトG」の収録で制作発表に参加していたトレンディエンジェルの斎藤司さんが登場しました。
斎藤司(以下、斎藤) 私、実はミュージカル俳優をちょっと嗜んでおりまして、みなさまに先輩として伺いたいんです。ちょっと(作品とは)関係ないかもしれないですけども……。
(トレンディエンジェル)
城田 あ、すみません。作品に関係ない話はやめていただけますか(笑)。
斎藤 みなさまの心を掴む差し入れを聞きたいんですけれども。
加藤 僕はいろいろ差し入れしていて、コロナ禍の前は自分で作ったチャーシューとか。
城田 和樹はいつも現場に食事を作って持ってきてくれます。僕にお弁当も作ってくれました。(前回の『ファントム』公演時の稽古場で)クリスティーヌが隣の席だったんですね。席に着いたらお弁当箱が置いてあって。ちょうど前日にクリスティーヌたちとお弁当の話をしていたので「え、どっちが作って来てくれたんだろう!?」と思ったら、和樹が「よかったら」って。
加藤 すみませんね僕で(笑)。
城田 びっくりしました。キュンってしました。それくらい彼は自分で差し入れを作ってくるんです。これが一番じゃないですか? これに勝るものはないと思います。想いをしっかり込めて家でグツグツ煮込んで。今日はハンバーグ、今日は○○みたいに日々変わっていくんですよ。それを食べて僕は生きながらえていました。
斎藤 なるほど! 明後日、私は公演がございますのでチャーシューをお待ちさせていただいております(?)。
城田 なんだって?(笑)テンパっていますけど、大丈夫ですか斎藤さん!
斎藤 急に私とんでもないことしてしまったと… ありがとうございます。頑張ってください!