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■日々是カンゲキ ータカラヅカ エッセイー 第21回「ヅカオタの妄想癖」

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ヅカオタの妄想癖

日々の観劇(感激)生活の中での起こりがちなできごと(あるある)を実体験も交えて面白く描写しつつ、よくある疑問を一緒に考えてみる、エッセイ風なコラム。その時々に上演されている作品に関するお役立ち情報も折り込んでいきます。
第21回目は「ヅカオタの妄想癖」です。ぜひご一読ください。

 『RRR』というインド映画にすっかりハマってしまった私はある日、ふと思い付いた。「この映画、タカラヅカで舞台化したらいいんじゃない?」と。
 こうなると妄想の歯車は止まらない。たまたま拙著『タカラヅカの解剖図鑑』チーム(イラストの牧彩子さんと編集者Mさん)が3人とも『RRR』にハマっていたため、「タカラヅカで舞台化したら配役は? 演出は?」というお題で軽く2時間ほど盛り上がってしまったのだった(この会話に興味ある方はVoicyを聴いてください!)。
 そうしたら何と、本当にタカラヅカで上演されることになった。まさか妄想が現実になってしまうとは!! まさに驚きの事態である!!!

 かくの如くヅカオタたるもの、小説や漫画を読むたびに、あるいは映画やドラマを見るたびに「これをタカラヅカで上演したら?」と考えてしまいがちだ。そして、配役や場面ごとの演出などを細かく検討してしまう。
 何故、これほどまでにあらゆる物語がヅカオタの妄想癖をそそるのか? 思うに、これには2つぐらいの理由が考えられる。
 妄想したくなる理由のひとつは、トップコンビの存在だ。タカラヅカはどの組もトップスターとトップ娘役のコンビがいる。さらに、トップスターの後にもスターが続いて…という構成がはっきりしている。だから、お気に入りの物語に出会うたびに、まるで洋服をあれこれ試着するが如くにタカラヅカのメンバー構成を物語に当てはめたくなってしまうのだ。
 当然、男女が恋に落ちる話は格好の妄想のタネとなる。あるいは男同士の友情物もそうだろう。ちなみに『RRR』は両方の条件に当てはまっている。だから、じつはタカラヅカにはぴったりの題材なのである。

牧彩子さんの脳内ですでに上演されていた妄想劇場
牧彩子さんの脳内ですでに上演されていた妄想劇場

 妄想癖をそそる二つめの理由は、タカラヅカの演目があまりにもバラエティに富んでいることだ。知る人ぞ知る小説、昔の映画から史実まで、想像を超えた幅広い題材が次々と舞台化されていく感がある。
 巷の話題に乗っかった舞台化は世間ではよくあるが、タカラヅカでは意外と少ない印象がある。だが、『RRR』の例を見ればわかるように、やるときはものすごい本気を出してくる。逆に、タカラヅカで舞台化されることで思いがけない作品が脚光を浴びることの方が多い。だから、タカラヅカを観ていると自分では絶対に読まないであろう小説や漫画、見ないであろう映画やドラマについて詳しくなり、見聞が広がったような気分にさせられる。
 したがって、お気に入りの作品がどれほどマニアックなものであっても「もしかしたら、タカラヅカなら見つけてくれるかも」という一抹の希望を胸に抱きながら妄想に励んでしまうのだ。

 というわけで今日もまた、誰も観たことのない新作オリジナル作品が誰かの脳内で上演されていることだろう。そして、せっせと妄想に励んでいれば、いつかそれが現実になる日が訪れるかもしれない。

妄想の方向性は人それぞれ
妄想の方向性は人それぞれ

中本千晶(なかもと ちあき)

山口県周南市出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。
2023年、早稲田大学大学院文学研究科にて博士(演劇学)学位を取得したタカラヅカ博士。
舞台芸術、とりわけ宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。
『タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史』(エクスナレッジ)好評発売中。

『タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史』(エクスナレッジ)
タカラヅカの解剖図鑑
詳説世界史
2021年12月2日発売
文/中本千晶
イラスト/牧彩子
監修/川村宏(高校世界史担当 社会科教諭)
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イラスト牧彩子(まき あやこ)

1981年生まれ。宝塚市在住。京都市立芸術大学を卒業後、2008年より宝塚歌劇のイラストを中心に活動。
宝塚歌劇情報誌TCA PRESSのイラストコーナーを連載中。
『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』、『タカラヅカ流日本史』などのイラスト担当。
初の自著『寝ても醒めてもタカラヅカ‼︎』の他、新刊『いつも心にタカラヅカ!!』(平凡社)好評発売中。

『いつも心にタカラヅカ!!』(平凡社)
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読んで楽しむ宝塚歌劇演目ガイド123選
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牧彩子 著
宝塚歌劇の人気演目から知られざる名作まで、あらすじ・見どころ・ツボを楽しく解説します!
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次回予告

第22回「日々是カンゲキ」のテーマは、「元気の素!タカラヅカ」

先日、ちょっと心にダメージを受ける出来事があった中本さん。翌日たまたまタカラヅカの観劇予定があり、あら不思議。嫌な気分は少しずつ、少しずつ消え去っていったのだった…。
次回も中本さんと牧さんの素敵な文章とイラストでお届けいたします。
「日々是カンゲキ」はセディナ貸切公演にて先行配布中。第22回「日々是カンゲキ」は2023年9月以降の貸切公演にて配布、WEB版の掲載は貸切公演での配布終了後となります。
ぜひセディナ貸切公演にて、先行配布中の「日々是カンゲキ」をご確認ください!