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■日々是カンゲキ ータカラヅカ エッセイー 第11回「タカラヅカのお手紙文化」

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タカラヅカのお手紙文化

日々の観劇(感激)生活の中での起こりがちなできごと(あるある)を実体験も交えて面白く描写しつつ、よくある疑問を一緒に考えてみる、エッセイ風なコラム。その時々に上演されている作品に関するお役立ち情報も折り込んでいきます。
第11回目は「タカラヅカのお手紙文化」です。ぜひご一読ください。

いつも思うのだが、タカラヅカファンは筆マメだ。「手紙を書くこと」に対してハードルが低い人が多いのである。
ご贔屓スターに対して、感動や励ましのメッセージをしたためるのはもちろん、キラリと光るお芝居やダンスなどが目に留まった下級生に、お手紙を書きたくなってしまうという人も多い。
こうしたタカラヅカのお手紙文化はいいものだ。とりわけ、コロナ禍で入り待ち・出待ちなどができなくなってしまった今、お手紙でのやり取りは以前にも増して大きな意味を持つ。およそ全ての表現者にとって、自分たちの表現が人の心を動かし、元気や勇気を与えているのだという手応えほど、力を与えてくれるものはないからだ。
むろん、今や多くの俳優がインスタライブをやる時代である。ネットを活用すればファンと繋がることもたやすいが、そんな時代にあえてのお手紙、これがまた味わい深いのだ。公演や役にちなんだレターセットを探して歩いたり、「私のこの想い、うまく伝わるかしら」と何度も推敲したりする、そんなひとときには今どきなかなか味わえない贅沢さがある。

お手紙には、書き手の個性も表れます
お手紙には、書き手の個性も表れます。

出演者宛てのお手紙文化が広まったせいか、ファン同士の間にもお手紙文化が根付いている気がする。ギフトやお土産などを受け取るとき、あるいは貸したものを返してもらうとき、手書きのメッセージが付いている率が高いのである。まるでタカラジェンヌへのお手紙に使うような可愛らしい封筒に入っていたりすると、気分はすっかりタカラジェンヌで、ニヤニヤしながら何度も読み直してしまう。
チケット代をお支払いするときも、タカラヅカファンは無味乾燥な茶封筒ではなくて可愛い封筒を使う。また、新札で払えるよう「ATMで引き出したとき、たまたま出てきたキレイなお札を収集してしまう」のも「ヅカオタあるある」だ。
お礼の品で感謝を伝えるのが上手い人も多い。もちろん虚礼廃止という考えもあろうが、そんなに高くないもので、好みをわかってくれていて、センスやユーモアが感じられるギフトはやはり嬉しいものだ。贈り物上手な友人に秘訣を聞いてみたところ「何が喜ばれるか、考えて探す時間を楽しむこと」だと言われたことがある。それが「気持ちを贈る」ということなのだと思う。

ちょっとした工夫で、何倍もの愛が伝わる
ちょっとした工夫で、何倍もの愛が伝わる。

かくいう私も、見知らぬ人との一期一会の関係でも、無味乾燥では淋しいと思ってしまうタチだ。メルカリの商品発送でさえ、つい「このたびはありがとうございます」などと書いたメモを添えたくなってしまう。
こんなこと、きっと求められていない。むしろウザいと嫌がられるかもしれないけれど、それでも一言書かずにはいられない。世知辛い世の中だからこそ、感謝の気持ちは積極的に伝えたほうがいいじゃないか。そういう気持ちのやりとりの積み重ねが、きっと世の中に潤いをもたらし、世界平和にもつながるはず…そう信じながら今日も一筆添え続ける私であった。
そんな、お節介なコミュニケーションスタイルが身についてしまうのもタカラヅカのせい、いや、タカラヅカのおかげである。

中本千晶(なかもと ちあき)

1967年兵庫県生まれ、山口県周南市育ち。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。
舞台芸術、とりわけ宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。
主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)、『タカラヅカの解剖図鑑』(エクスナレッジ)。早稲田大学講師。
新刊『タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史』(エクスナレッジ)好評発売中。

『タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史』(エクスナレッジ)
タカラヅカの解剖図鑑
詳説世界史
2021年12月2日発売
文/中本千晶
イラスト/牧彩子
監修/川村宏(高校世界史担当 社会科教諭)
購入はこちら

イラスト牧彩子(まき あやこ)

1981年生まれ。宝塚市在住。京都市立芸術大学を卒業後、2008年より宝塚歌劇のイラストを中心に活動。宝塚歌劇情報誌TCA PRESSのイラストコーナーを連載中。『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』、『タカラヅカ流日本史』などのイラスト担当。
初の自著『寝ても醒めてもタカラヅカ‼︎』の他、新刊『いつも心にタカラヅカ!!』(平凡社)好評発売中。

『いつも心にタカラヅカ!!』(平凡社)
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牧彩子 著
宝塚歌劇の人気演目から知られざる名作まで、あらすじ・見どころ・ツボを楽しく解説します!
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次回予告

第12回「日々是カンゲキ」のテーマは、「○○さんって××さんに似てる!?」

タカラヅカファンは「○○さんは××さんに似ている」という話がお好き!?
若手スターが注目を浴びるとついつい「誰々さんに似てるよね」という話題で盛り上がりがちなタカラヅカファン。そんな「似ている」という話題には、ファンそれぞれの複雑な想いや考えがあって…?
そんなファンそれぞれの大切な想いに関するアレコレを、中本さんと牧さんの素敵な文章とイラストでお届けいたします。
「日々是カンゲキ」はセディナ貸切公演にて先行配布中。第12回「日々是カンゲキ」は2022年11月の貸切公演にて配布、WEB版の掲載は貸切公演での配布終了後となります。
ぜひセディナ貸切公演にて、先行配布中の「日々是カンゲキ」をご確認ください!