第10回
タカラヅカで磨く自己管理力
日々の観劇(感激)生活の中での起こりがちなできごと(あるある)を実体験も交えて面白く描写しつつ、よくある疑問を一緒に考えてみる、エッセイ風なコラム。その時々に上演されている作品に関するお役立ち情報も折り込んでいきます。
第10回目は「タカラヅカで磨く自己管理力」です。ぜひご一読ください。
あらゆる趣味の中でも「観劇」は最も面倒くさい趣味なのではないかと思う。というのも、チケットを取らなければすべてが始まらないからだ。これが思い立った時にホイと取れるものであればいいが、そうではないことは皆さまご存知のとおり。
チケット取りに血の滲むような努力を重ねていないタカラヅカファンを私は知らない。ファンかどうかの差異は、チケット取りに人生を賭けられるかどうかの差異であるといっても過言ではない。
来る日も来る日も、チケットのことを考えながら生きている気がする。ああ面倒くさい、実に面倒くさい! もうやめてしまいたい。でも、やめられない…。
と、こんなことをグダグダ書いてしまうのは、あるチケットの宝塚友の会の先行抽選登録が昨日までだったことに気付いて絶望しているからだ。「やることリスト」にちゃんと書いて下線まで引いておいたのに、見逃してしまった私のバカバカバカ!!(後日談:その後、チケットセディナで無事に買うことができました。皆さんもチケットセディナWEBサイトをチェックしてくださいね♪)
それでは望むままにチケットが取れればいいかというと、そうでもないところがややこしい。というのも、お金と時間が無限にあるわけではないからだ。観劇とはすなわち「安くはないチケット代を払って約3時間拘束されに行く行為」でもある。ところが、我々はヒマを持て余している金持ち貴族ではない。むしろチケット代を稼ぐために一日の大半の時間を使ってあくせく働いている。
よって、限られた時間と予算の中で観劇の楽しみを最大化するには、いかなる組合せでチケットを確保するのがベストなのか?を考え抜かねばならない。この最適バランスを見極めるために、費やしたチケット代をエクセルで粛々と管理している友人を知っている。こうなったらもはや業務ですよ、業務。
業務といえば、予算管理、時間管理に加えて体調管理も大事な業務である。とりわけコロナ禍になってからは「せっかく苦労してチケット確保したのだから、せめて次の観劇日までは元気に生きていたい」との思いで、感染予防に気を配ってきた。
この極私的キャンペーン期間が延長に延長を重ねて、今に至っている感がある。気を緩めている暇はないのである。タカラヅカを観ると元気になれる、とはよく言われることだが、コロナ禍にも負けず元気でいられているのは、まさにタカラヅカのおかげだ。
時間、お金、そして健康という、人生における三大リソースを、いかに無駄なくバランス良く使うか? ヅカオタライフの充実は、この自己管理力にかかっている。
事実、私の周りのヅカオタ友だちには、この自己管理力が高い人が多い。仕事に子育てに介護にと多忙を極めながら、劇場にも足しげく通い、推しに捧げる時間を捻出しているのだから頭が下がる。だが考えてみれば、ヅカオタ道を極めれば、おのずと自己管理力も磨かれていくのだから当然なのかもしれない。これぞタカラヅカにハマることでもたらされる意外な、でも価値ある副産物である。
文中本千晶(なかもと ちあき)
1967年兵庫県生まれ、山口県周南市育ち。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。
舞台芸術、とりわけ宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。
主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)、『タカラヅカの解剖図鑑』(エクスナレッジ)。早稲田大学講師。
新刊『タカラヅカの解剖図鑑 詳説世界史』(エクスナレッジ)好評発売中。
1981年生まれ。宝塚市在住。京都市立芸術大学を卒業後、2008年より宝塚歌劇のイラストを中心に活動。宝塚歌劇情報誌TCA PRESSのイラストコーナーを連載中。『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』、『タカラヅカ流日本史』などのイラスト担当。
初の自著『寝ても醒めてもタカラヅカ‼︎』の他、新刊『いつも心にタカラヅカ!!』(平凡社)好評発売中。
第11回「日々是カンゲキ」のテーマは、「タカラヅカのお手紙文化」
タカラヅカファンは筆マメ?
ご贔屓スターへのお手紙はもちろん、ファン同士のお手紙のやりとり、モノをやり取りするときに添えるちょっとしたメッセージなど、タカラヅカファンのお手紙文化に関するアレコレを、中本さんと牧さんの素敵な文章とイラストでお届けいたします。
「日々是カンゲキ」はセディナ貸切公演にて先行配布中。第11回「日々是カンゲキ」は2022年9月以降の貸切公演にて配布、WEB版の掲載は貸切公演での配布終了後となります。
ぜひセディナ貸切公演にて、先行配布中の「日々是カンゲキ」をご確認ください!